植物と昆虫の共存共栄の実態|植物とハエ

マムシグサ 共生
マムシグサ

昆虫と花の関係は、昆虫が蜜や花粉をもらう代わりに、花は授粉してもらう共存共栄の関係が普通です。ところが、昆虫を騙して受粉をしてもらうだけの酷い植物もありました。受粉する相手を利用するだけの厳しい関係でした。この記事では、そんな一端が垣間見える実例を紹介しています。

相手を利用するだけの酷い共存共栄の関係

植物と小さな昆虫の関係は、昆虫が植物から蜜や花粉をもらう代わりに、昆虫は植物の種子を実らせるお手伝いをする共存共栄です。

昆虫は花粉の運搬を担っていて、ポリネータと呼ばれています。

人から見ると、共存共栄は、ほほえましく感じられますが、本当は厳しい自然界で生きていくための一つの手段でした。お互いを利用しているだけの関係と言っても良いでしょう。

共存共栄に見える関係は、たまたま結果として、双方に利を得るようになったと考えた方が良さそうです。

このことが分かる実例を紹介します。

<3>花粉を運ぶハエをだまして受粉させる花

南アフリカ原産のガガイモ科の植物「スタペリア・ギガンテア」は、凡そ10㎝の星型の花を咲かせます。

ふつう、花は美しいですが、「スタペリア・ギガンテア」は薄い褐色です。多くの筋がむき出し状態でグロテスクという表現がぴったりの花です。しかも「スタペリア・ギガンテア」は、腐食臭を漂わせています。

「スタペリア・ギガンテア」は、ハエを誘うために、腐食臭なのでしょう。

逆に、こんな酷い花なら、一度は見てみたいという人もいるかもしれません。日本では、国立科学博物館筑波実験植物園のサバンナ温室で、栽培されています。

植物にだまされるハエ

「スタペリア・ギガンテア」の花が咲き始めると、腐食臭にハエが集まってきます。ハエはポリネータとして働きます。

ハエのおかげで、「スタペリア・ギガンテア」は、果実をつけますが、ハエは、「スタペリア・ギガンテア」に騙(だま)されていたのです。

植物によるハエのだまし方

ハエは「スタペリア・ギガンテア」の花から腐食臭がすると、汚物を探すために、花の中に潜り込みます。ハエは、花の蜜や花粉を得るためではなく、腐食臭に誘われて汚物に卵を産み付けに来たからです。

花粉を体に付けたハエが花の中に入ると、「スタペリア・ギガンテア」の花は授粉して子孫を残します。ところが、時が経つと「スタペリア・ギガンテア」の花は、枯れてしまいます。

ハエは、枯れてしまう花の中に卵を産みつけたため子孫を残すことはできません。(ハエはだまされていたのです)

「スタペリア・ギガンテア」の花は、ハエが汚物に卵を産む性質を利用して腐食臭を漂わせて、ハエに花粉を運ばせていたのです。一見、共存共栄に見えますが、ハエと「スタペリア・ギガンテア」の目的は違います。

ハエにとっては、だまされただけで、何のメリットもなかったのです。

通常の自然界の共存共栄は、お互いが恩恵を受ける関係ですが、ハエと「スタペリア・ギガンテア」は、自分たちが生き残るために行動しているのです。

他の、共存共栄の植物と昆虫の関係も、相手のことは二の次です。自分たちだけが生き残れれば良いと考えていたのでしょう。

次に紹介するハエとマムシグサの関係も、そのような関係です。

マムシグサとハエの関係

日本に自生するマムシグサも、ハエの好む腐食臭を漂わせて、筒状のホウ内に誘い込みますが、受粉の手助けをしてくれたハエが外に出る穴はありません。

マムシグサの筒状のホウ内に入ったハエは外に出られなくなります。ハエは、メリットを受け取るどころか、命までマムシグサに捧げる羽目になってしまうのです。

まとめ

「スタペリア・ギガンテア」や「マムシグサ」とハエの関係は、ハエが腐食物内に子孫を産みたいということを、植物が利用していました。

ハエと植物との目的が違っていたために片方が相手側をだましたことになりますが、もしも目的がマッチしていれば、双方の利益になる共存共栄だったのでしょう。

そんな風に考えれば、自然界の共存共栄は、ちょっと方向が違うだけで厳しい関係です。

自然界の生き残りをかけただまし合いを、傍から見ているのは面白いですが、自然界の生きものたちの生活を知るたびに、人間に生まれて良かったと実感しています。

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