ウメやサクラが毎年開花する仕組みは、特定の化学物質の関与が確認されています。但し、ウメもサクラも同じ仕組みです。仕組みが同じなのに、ウメの方がサクラよりも早い時期に開花するのは何故でしょう。記事では、分かりやすく理由を紹介しています。
ウメの花がサクラより早く咲く理由
ウメとサクラの花は、前年の夏に芽をつけます。そして、花が開花するまでのメカニズムも同じです。
それでは、何故、ウメの開花は桜前線よりも少しだけ早いのでしょう。もちろん、例外もあります。(北海道では、ほぼ同時期に開花することもあるようです。)
この理由は、ウメの花とサクラの花の眠りの深さが違うためと言われています。つまり、ウメの眠りは浅く、サクラは深い眠りです。
2月頃になって暖かい日が訪れると、眠りが浅いウメの花は、目覚めてしまうために開花します。ところが、サクラはぐっすり眠っているため、多少暖かい日になっても目覚めません。
これが、ウメがサクラよりも先に開花する理由です。
ウメとサクラの花が咲くメカニズム
ウメもサクラも、花の開花は化学物質でコントロールされています。
ウメやサクラ等の植物が、寒さから新芽を守ることや、開花時期を知ることが出来るのは、全て化学物質の働きによるものです。
次に、ウメの新芽が出てから開花するまでの一連の流れを、紹介します。
開花までの化学物質の働き
ウメの新芽は前年夏には、付いています。そのため、寒い冬から「芽」を守らなければなりません。
厳寒の冬から新芽を守る化学物質の働き
夏が終わって秋になると、夜が長くなります。この信号をウメの葉っぱが感知してアブシシン酸という化学物質が作られます。
アブシシン酸は、葉から新芽に送られます。すると、アブシシン酸の作用で、新芽は越冬芽(えっとうが)と呼ばれる寒さに強い硬い芽に変えられます。
新芽は、硬い越冬芽になるため、寒い冬を乗り越えられるのです。
越冬芽が春の訪れを知る仕組み
越冬芽(えっとうが)は眠っている状態で冬を越します。では越冬芽は、どのようにして目覚める時期を知るのでしょうか?
アブシシン酸は、越冬芽内に多く存在していますが、厳寒の低温にさらされると少しずつ減少していきます。
そして、冬の時期を過ぎた頃になると、アブシシン酸は無くなります。
アブシシン酸が消失すると、新芽は休眠から目覚めて、いつでも成長することができるようになります。
芽の成長を促す化学物質
休眠から目覚めると、新芽内では暖かなる気温に合わせるようにジベレリンという化学物質が作られます。
ジベレリンは、暖かくなると新芽の成長を促して開花を促進します。
このような開花のメカニズムはサクラも同じです。しかし、仕組みが同じなのに、何故、ウメの方がサクラよりも寒い時期に咲き始めるのでしょうか?
それは、前にも記載したように、眠りの深さの違いと言われています。
サクラの方が、ウメよりも深い眠りになる原因は、分かっていないのでしょうが、ウメは、次のように考えているのかもしれません。
ウメの気持ち
ウメが咲くころは、まだ肌寒い時期です。
ところが、受粉をしてくれる虫や鳥は豊富にいます。開花している花も少ないためウメにとっては好都合です。
それなら、サクラが咲く前に咲いてしまった方が良いと考えたのでしょう。
まとめ
ウメやサクラの花が開花する仕組みには、特定の化学物質が関与していました。ウメもサクラも同じ化学物質で開花しますが、ウメの方が眠りが浅いため、速く目覚めていたようです。
化学物質は、気温の変化に合わせて、新芽を寒い冬の気候から守ることや、新芽を目覚めさせて成長を促す働きまでを担っていました。
ウメの開花時期は、人の感覚では、ちょっと速いように感じられますが、受粉をする虫や鳥は、既に沢山います。
ウメにとっては、花々が咲き誇るであろう、桜前線よりも先に咲いてしまうのがベストなのでしょう。