タンポポの事例ですっきり分かる倍数体の意味

タンポポ タンポポ
タンポポ

植物の本で何かを調べようとすると、「2倍体・3倍体・倍数体」などの用語がでてきます。今までは、パスしていましたが、タンポポの事例で、分かりやすく紹介している本と出会ったため、紹介します。これで、2倍体や倍数体などの意味も分かるでしょう。

真冬でも咲いているタンポポ

真冬になると散歩するのは辛いですが、道端にタンポポの鮮やかな黄色の花が咲いているとほっとして、元気づけられます。

家に帰ってタンポポを調べると、いつも2倍体とか、倍数体というような判りにくい言葉が出て来て、とん挫していました。これはいつものパターンです。

今回は、もうひと踏ん張りして、2倍体や倍数体などの言葉の意味を確認してみました。

2倍体って何のことなの?

多くの動物は、細胞の中に2組の染色体をもっています。染色体は、細胞の核内にあって、たんぱく質にDNA(デオキシリボ核酸)が巻き付いています。

この染色体1組のことをゲノムと呼びます。

ゲノム1組の染色体の数を「基本数」と言います。基本数のXは、生物によって異なります。

人は、細胞の中に2組のゲノムを含むため2倍体です。そして、染色体が3組あれば、3倍体。染色体が、4組あれば、4倍体、と呼ぶことになっていました。

そして3倍体以上のものを、倍数体と言います。

タンポポには、多くの倍数体があって、世界では2〜12倍体、日本では2〜8倍体のタンポポが確認されています。

倍数体が違うと何に影響するの?

2倍体と3倍体の生物では、子孫を残す方法が違います。

2倍体の場合

普通の動物は、オスとメスがいて、それぞれ精子や卵子という配偶子(はいぐうし)を作ります。

配偶子(精子・卵子)は、それぞれ1倍体です。これらは、2倍体の親から1倍体の配偶子が作られます。そして、1倍体同士が接合すると2倍体の受精卵が誕生します。

2倍体から1倍体のように、数を減らすことを、減数分裂と呼びます。そして、受精による生殖で受精卵を作る方法が、有性生殖です。

2倍体のタンポポの配偶子は、卵細胞(めしべ)と精細胞(花粉)が有性生殖によって実を付けます。

カントウタンポポは、2倍体です。しかも他個体の花粉でなければ実をつけないため、群生することが多いです。

カントウタンポポは、自分の花粉では受粉しないため、仲間のタンポポと群生しているのです。

倍数体の場合

3倍体以上の倍数体のタンポポは、無融合生殖(むゆうごうせいしょく)です。そのため、受粉しなくても種子を付けることが出来ます。つまり、親のタンポポと遺伝子は同一(クローン)です。

《無融合生殖とは?》
無融合生殖の植物とは、通常の受粉をしなくても、子孫を残せる繁殖体に置き換わることです。

セイヨウタンポポは、無融合生殖のため、単独で子孫を残せます。そのため、セイヨウタンポポは、日本に入ってきてから、あっという間に仲間を増殖できたのでしょう。

まとめ

植物の専門書では、2倍体とか3倍体、倍数体という用語で説明した内容がでてきましたが、ちょっと難しいのでパスしていました。今回、これらの意味をタンポポの事例で紹介している本と出会い、判りやすく理解することができました。

これでセイヨウタンポポが急増した理由が良くわかりました。

ただし、2倍体のカントウタンポポやカンサイタンポポも、生殖の仕方が異なる3倍体のセイヨウタンポポと交雑していました。そして、新たな倍数体の雑種タンポポが生まれることも知りました。

セイヨウタンポポは外来種問題で騒がれています。さらに、2倍体と3倍体のタンポポが交雑して生まれる雑種タンポポの出現は、倍数体の研究でも注目されています。

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