イチョウの木は、2億年前の恐竜時代に繁栄していたことが化石で確認されています。中国原産のイチョウの木は、古くはヨーロッパにもありましたが、現在では中国の一部と日本にあるだけです。この記事では、そんな貴重なイチョウの木について紹介しています。
イチョウは古代植物だった
2億年前の恐竜時代には、イチョウの仲間が、ほぼ世界中で繁栄していたことが化石で確認されています。
ところが、イチョウの多くの仲間は恐竜とともに絶滅してしまいました。
イチョウの木は、100万年前に絶滅した古代植物だったのです。
現在、野生のイチョウの木は、日本と中国の一部にしかないそうです。日本のイチョウの木は、中国で自生しているイチョウを、僧侶が持ち込んだものと言われています。
イチョウの葉にある古代植物のなごり
一般的な植物の葉の葉脈(ようみゃく)を見ると中央に太い葉脈があって、そこから枝分かれするように細い葉脈があります。
葉脈
葉脈とは、葉っぱにある筋(すじ)のようなものです。葉脈は、葉の強度を保ち、葉の隅々まで水や養分を届けるための維管束系(いかんそくけい)の働きをします。
一般的な植物の葉脈の形は、葉っぱに水分や養分がしっかり行きわたる構造になっています。ところが、イチョウの葉脈は、1本の葉脈が、途中から分かれていて、それをたとっで先端に行くと、さらに2つに分かれています。
そのため、イチョウの葉への水分や養分は、先端に行くほど十分には供給されないように見えます。
計画的に張り巡らされるように配置された一般的な植物の葉脈の構造と比べると、イチョウの葉脈は、見劣りします。
これが古代植物のなごりです。
貴重だったイチョウの木
学問的には、イチョウは裸子植物門イチョウ綱イチョウ目イチョウ科イチョウ属に分類されています。イチョウは、氷河期にほとんど絶滅してしまったため、現在のイチョウが唯一現存する種です。
そのため、イチョウは、レッドリストの絶滅危惧IB類に指定されています。
絶滅危惧IB類は、ごく近い将来に野生種の絶滅が極めて高いと危惧されている、IA類に次いで絶滅の危険性が高いものです。
確かに日本のイチョウの木の印象は強烈で、どこにでもあるように感じていました。ところが、日本のイチョウは、神社・寺、学校の敷地内、街路樹など以外では見られません。
まとめ
秋になると黄葉するイチョウは、ポピュラーな街路樹として親しまれていますが、生きている化石と呼ばれるような古代植物でした。
裸子植物は草食恐竜の貴重なエサでしたが、イチョウの葉や実(銀杏)には毒があります。この毒は、大量に食べないと毒性は発揮されませんが、ギンコトキシンと呼ばれる食中毒の原因物質が含まれています。
草食恐竜は大量に葉を食べるため、イチョウの木は、葉や実に毒を持つことで、草食恐竜から身を守っていたのでしょう。
イチョウの木は、街中の街路樹などに使われている人気のある木です。まさか絶滅危惧種に指定されているとは考えたこともありません。
イチョウの黄葉が眩いばかりに感じられるようになったのは、年齢のせいかとも思っていました。でも、これ程貴重な存在だったことを知ってからは、余計に黄色の葉が眩しく輝いて見えます。