栗のイガを避けて、実に産卵するクリシギゾウムシのやり方

栗 昆虫・虫

栗の実を食べる主な害虫はクリシギゾウムシです。でも、クリシギゾウムシは、どのようにして、痛いトゲで守られている実に産卵しているのでしょう。また、木になっている時には、実の内部に潜んでいることも分かりません。どんな工夫をしているのでしょう。

栗の実に開けられた小さな穴

秋も深まり、栗の実が採れる季節になって来ました。栗の実を拾ったことのある人は、固い栗に小さな穴が開いているのを見たことがあるでしょう。

栗拾いに行くと実感しますが栗の実は、触れると痛いトゲに守られています。栗の実の穴は、栗を食べる虫の仕業だということは直ぐに判ります。

固い栗の実に小さな穴を開けるクリシギゾウムシは、どのようにして、イガに守られている実に穴を開けているのでしょう。

尖ったイガに守られている栗の実

栗の実は、尖ったイガの中にあります。地面に落ちた栗は、大抵イガの口が広がっていますが、それでも焦げ茶色の実を取り出すのは大変です。

栗の実の表面は、固いこげ茶の角質層で覆われていて、食べようとしても簡単には食べることはできません。

クリシギゾウムシとは?

地面に落ちた栗の実に、小さな穴を開けているのは、クリシギゾウムシという昆虫です。クリシギゾウムシについて紹介します。

体長8〜10mmのクリシギゾウムシは、長い口吻(こうふん)を持った普通のゾウムシに見えます。ゾウムシには、長い口吻があります。但し、クリシギゾウムシのメスの口吻の長さは特別です。オスの口吻長が、3.5mm程に対して、メスのそれは倍以上(8mm)もあるからです。

クリシギゾウムシのメスだけが持っている長い口吻は、トゲの上からでも実に届くためです。クリシギゾウムシのメスは、長い口吻を使って産卵するからです。

クリシギゾウムシの生態

クリシギゾウムシの成虫は、9月上旬〜10月中旬に羽化(うか)します。

10月上旬から下旬ごろになると、交尾後のメスは長い口吻を使って栗の実の渋皮付近まで穴を開けます。そして、長い口吻で開けた穴の底に、楕円形の卵を産みつけます。

クリシギゾウムシは、栗一つ当たり2ヶ〜8ヶの卵を産み付けます。卵は10日でふ化して幼虫になります。幼虫は、渋皮に沿って栗の実を食べますが、生長するとともに栗の実の内部を食べるようになります。

クリシギゾウムシは栗の実を食べても、糞を外に出しません。糞を外に放出しないため、栗の実に潜んでいる虫の発見を難しくしています。

10月下旬~12月上旬になって、実が落下すると、幼虫は栗の実に3mm程の穴を開けて、栗から出て地中に潜ります。

地中内のクリシギゾウムシは蛹(さなぎ)の状態で越冬します。多くの個体は、夏ごろ成虫になって出現しますが、2年後や3年後に成虫になる個体も報告されています。

まとめ

固い栗の実に小さな穴を開けて産卵する害虫の代表は、クリシギゾウムシという昆虫です。クリシギゾウムシのメスは、特別長い口吻を使うことで、イガを避けて産卵していました。

クリシギゾウムシは、農家の人に見つからないように、幼虫の糞を実の内部に留める知恵も持っています。栗農家から見ると、酷い害虫でしょうが、虫マニアから見ると、素晴らしい昆虫です。

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