根粒菌とマメ科植物の共生は、とっても厳しい関係

緊張関係 根粒菌
緊張関係

マメ科植物の根に、コブのようについている根粒菌とマメ科植物の共生について紹介しています。一見すると双方に利益のある良い関係ですが、詳しく見るとマメ科植物の厳しい管理の下で成立していることが分かります。厳しい自然界の共生の本当の姿なのでしょう。

根粒菌の働き

根粒菌(こんりゅうきん)を知らない人は多いかもしれませんが、家庭菜園を楽しむ人は、根粒菌を見ているかもしれません。マメ科植物の根っこを引き抜くと、根のあちらこちらに数mm大のコブのようなものが付いています。見たことのある人は多いでしょう。

実は、これが根粒と呼ばれるものです。根粒の1つのコブの中には100億個ものバクテリアが棲んでいます。

根粒菌は、マメ科植物と共生していています。根粒菌は、マメ科植物から糖分をもらう代わりに、窒素化合物を与えています。

根粒菌は、窒素固定をします。窒素固定とは、空気中の窒素ガスを窒素化合物にすることです。根粒菌は、このようにして、窒素化合物をマメ科植物の栄養分として与える働きをしています。

これらの関係から、マメ科植物と根粒菌は、共生関係と呼ばれています。

マメ科植物

エダマメ、カラスノエンドウ、シロツメクサ、レンゲなどがマメ科植物です。

収穫後の水を抜いた田んぼが一面のレンゲ畑になるのは、農家の人が、田んぼに肥料を供給していたのです。

つまり、レンゲに含まれる窒素を、田んぼの土壌に供給するために、意図的に行っていたものです。

根粒菌の暮らし方

マメ科植物と共生していない根粒菌は、落葉の分解などをして質素に暮らしています。このような根粒菌は、窒素固定もしていません。

ところが、マメ科植物の根の中で暮らす根粒菌には、活動に必要な糖分と安全な環境があるためでしょうか? とってもエネルギッシュに窒素固定をします。

窒素固定に必要なこと

根粒菌が、空気中に存在する窒素(ちっそ)を取り込んで窒素化合物にするには大きなエネルギーが必要です。

そのため、根粒菌は酸素呼吸をしなければなりませんが、窒素固定に必要な酵素(こうそ)は、酸素があると不活性化してしまいます。

このような事情の為、根粒菌は使った酸素を速やかに排出しなければなりません。

マメ科植物は、根粒菌のために「根粒菌が呼吸をするための酸素運搬」と「余分な酸素の速やかな除去」を行っています。

マメ科植物が共生のためにしている事

人は、新鮮な酸素を体中に送るため、血液中にヘモグロビンを持っています。マメ科植物には、ヘモグロビンに似た働きをする、レグヘモグロビンがあります。

そのため、マメ科植物は、大量の酸素を正確にコントロールすることができます。

つまり、マメ科植物は、植物の血液とも言える、レグヘモグロビンの活用で、根粒菌との共生を可能にしたのです。

マメ科植物の厳しい管理下で成立した共生

根粒菌とマメ科植物の共生は、持ちつ持たれつの関係に見えます。但し、詳しく見ると根粒菌は、マメ科植物に管理されているように見えます。

根粒菌が根に棲みつく方法

根粒菌は、マメ科植物の根から出る、フラボノイドという物質を目指して根毛の先端に向かいます。マメ科植物の根に到着した根粒菌は、特別な物資を出して、根粒菌の存在を植物に伝えます。

根粒菌に気づいた植物は、根っこを丸く変形させて根粒菌を包み込むように取り込みます。根の中に入った根粒菌は、細胞分裂を繰り返しながら根の先端から内部に入っていきます。

根の中では、根粒菌を導くように筒状の道が作られています。そして根粒菌が棲むための部屋のような根粒(コブ状の小部屋)が作られます。

マメ科植物の根っこは、水分や栄養分を地中から吸収するためだけではなく、根粒菌を根の中に迎え入れるために働きます。そしてコブのような根粒を作ると、根粒菌に糖分を与えます。

やがて、根粒菌は、空気中の窒素を窒素化合物にして植物に与える関係が成立します。

マメ科植物による根粒菌の管理

マメ科植物にとって根粒菌は、栄養分を与えたりもらったりするパートナーです。ところが、マメ科植物に都合が良いように管理・支配していました。

管理の内容

マメ科植物の根の中には、根粒菌の通り道があります。ところが、この道は途中で止まっていて、簡単には根粒に到達できないようになっています。マメ科植物は、窒素量を細かくチェックしています。

仮に、窒素の供給が十分の時には、それ以上不要と判断します。すると、根粒菌の通り道は遮断したままにします。

足りなくなれば、通り道を開いて必要量だけの根粒菌を新たに根粒に招き入れるのです。

マメ科植物の管理は、これだけではありません。例えば、窒素固定能力の少ない根粒に対しては、糖分を与えないで殺してしまいます。

まとめ

根粒菌とマメ科植物の共生関係を紹介しました。一見、双方が利益を受けて素晴らしい関係に見えますが、良く見ると、根粒菌はマメ科植物に管理されていました。

厳しい自然界の共生関係と言われる、本当の姿を垣間見た気がします。

タイトルとURLをコピーしました