小さな昆虫が巨大化しない理由

昆虫の硬い外骨格 昆虫・虫
昆虫の硬い外骨格

多くの昆虫は、小さいけれど力持ちで、空も飛べるし、硬い体を持っています。昆虫が人と同じ大きさになったら、まさにモンスターでしょう。昆虫には多くの種がいますが、皆、小型です。何故、巨大化しないのでしょうか? この記事では、理由を紹介しています。

昆虫が大きかったらモンスターと呼ばれた

昆虫は、小さな体でも、大きくて重いものを運べる、飛ぶことが出来る、素早い動きができる等、様々な優れた能力を持っています。

もしも昆虫が人間と同じくらいの大きさになったら、きっとスーパーマン、いやモンスターと呼ばれたでしょう。

しかし現実には、昆虫は小さなものばかりです。化石で確認されたトンボの最大サイズは、翅(はね)を含めて70㎝もあったようです。ところが、現在のトンボで最大のものは、17㎝ぐらいです。どうやら昆虫に巨大化の選択は、なかったのでしょう。

古代のトンボは、確かに大きいですが、そのサイズも小さな昆虫の世界だからビッグサイズと感じるのでしょう。

では、優れた能力を持っている昆虫は、何故、もっと大きくならないのでしょうか?

昆虫の硬いからだと成長の関係

カブトムシを連想して下さい。カブトムシは、鎧(よろい)のような硬い外骨格でおおわれています。子供たちは、この硬さに安心感をいだき、カブトムシにヒーローのような憧れを持ちます。

カブトムシほどの硬さはなくても、他の昆虫も、鎧(よろい)を身にまとっています。昆虫の硬い鎧(よろい)のような外骨格は、「クチクラ」と呼ばれるもので、昆虫の表皮から出てきた分泌物が固まったものです。

クチクラは、外敵から身を守る大切な役目をしますが、一度固まると硬くて伸びません。つまり、昆虫が成長して体のサイズを大きくするには、硬い鎧(よろい)を脱皮しなければなりません。

昆虫の脱皮に伴う問題点

昆虫は、硬い外骨格におおわれていて、成長するには、鎧(よろい)を脱ぎ捨てなければなりません。それなら、脱皮を繰り返して、どんどん大きくなればいいでしょうが、脱皮をするのは命がけです。

脱皮のリスク

脱皮をするには、鎧(よろい)を脱ぐのですから、そんな時に外敵におそわれたら大変です。しかも、脱皮をした後の新しい鎧(よろい)は、しばらくの間は柔らかくて役目をはたしません。

新しい鎧(よろい)が固まるまでの時間は、体が大きい程、長時間かかります。そして、体が大きいと別の問題も発生します。

昆虫は、骨がないので、鎧(よろい)のような外骨格で体を支えています。大きなカマキリが脱皮をする時には、大変です。
カマキリは、重力で垂れ下がる重い体を保持するため、何かにぶら下がって体を支えながら脱皮をしなければなりません。

その点、水中にいるザリガニ等は、水の浮力に助けられています。

昆虫の脱皮を難しくしているものには、もう一つ原因があります。

それは、昆虫が持っている、気管(きかん)と呼ばれる呼吸器官の存在です。

昆虫には人のような肺はありません。古生代の酸素濃度は、現在よりも高くて30%〜35%もあったと言われています。そのため、当時の昆虫は、気管呼吸で巨大化したと考えられています。

現在の地球の酸素濃度は低いため、空気(酸素)は、昆虫の胴体横などにある気門(きもん)という孔から取り込まれます。気門から取り入れられた空気は、気管という小さな管を通じて全身に運ばれます。

昆虫には、鼻の孔はありません。昆虫は、体の横にある気門から空気を取り込む構造です。

気管の表面は、例の鎧(よろい)で覆(おお)われています。その為、体のサイズが大きくなれば気管の長さも増してしまいます。

つまり、脱皮では気管の微細な管も脱ぎ捨てるため、困難さが増大します。

まとめ

小さな昆虫が、大きくなるよりも現状のサイズを選んだ要因は、他にも様々なものがあるでしょう。但し、脱皮にともなう制約説は、重要です。

もう一度まとめると、

昆虫は、外骨格という硬い鎧(よろい)で体を支え、そして外敵の攻撃から身を守っています。

この鎧(よろい)は、硬くて伸びないため、成長時には脱ぎ捨てて新しいものと交換しなければなりません。しかし脱皮には、無防備状態や、生存に不可欠な呼吸系統の管の交換等の複雑な作業が伴います。

硬い鎧(よろい)を身にまとうことを選んだ昆虫は、少しでも脱皮の時間を少なくしてリスクを減らす必要があります。そのため、体の大きさを小さい状態に維持せざるを得なかったのでしょう。

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