ウソという小鳥が、災いを除いて福を招く神事に選ばれた理由

ウソのオス
ウソのオス

ウソという鳥は江戸時代から続いている、災いを除いて福を招くと言われる「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれた小鳥です。この記事では、神事の内容や、ウソが選ばれた理由などについて、小鳥の生態の紹介をしながら、分かりやすく説明しています。

ウソという小鳥

ウソは、スズメよりも少しだけ大きくて、暑さに弱い小鳥です。ヨーロッパの温帯から亜寒帯地域に広く分布しています。日本では涼しい2000メートル以上の亜高山帯の針葉樹木に生息していますが、冬になると低山に降りてくるので見ることもできます。

ウソは、目立つのが嫌で、とっつきにくい性格の小鳥です。おとなしくて、おっとりしていて、テリトリーに別のウソが入ってきても、攻撃などはしない温和な性格の愛すべき小鳥です。

そんなウソという小鳥の名前は、どんな理由で名付けられたのでしょう。

ウソという小鳥の特徴と生態

ウソの性格は、引っ込み思案のようですが、オスの姿は、次のようにカラフルです。

ウソのオスの姿は、くちばしの周りから後頭部、翼と尾は黒ですが、頬から喉元は紅色です。そして、背中は濃灰色、腹部は灰色、腰からお尻の羽色は白色の小鳥です。

ただし、メスはベージュ色で、オスと比較すると地味です。

日本のウソは、亜高山針葉樹林や北海道のカラマツ林で繁殖して、冬になると全国の平地や林で見ることができます。

ウソの卵と巣立ち

ウソは、細い枝などを集めて、葉でおおわれた見えにくいところに巣を作ります。巣には、苔(こけ)や地衣類などを敷いてクッションにしています。

卵には、薄青色で赤茶の斑点が入っています。産卵数は、4〜6個です。

約2週間程の抱卵で、ヒナが生まれます。ヒナは、親鳥が運んでくれた種子や昆虫を食べて成長します。

ヒナの巣立ちは、羽化後2週間程ですが、巣立ちの時には2~3羽ずつのグループになって飛び立ちます。

ウソの食べ物と鳴き声

ウソのエサは、針葉樹や広葉樹のタネや果樹の芽です。数羽で飛来して枝にとまって芽や実をついばみます。

ウソは、オスだけでなく、メスも鳴く珍しい鳥です。

鳴き声は、フィヨフィヨ、フィーフィーなどと口笛を吹くように、少しもの悲しく、綺麗で、響き渡る声を出します。

ウソという名前の由来

鎌倉時代には、既にウソと呼ばれていました。漢字では、「鷽」または、「嘯(うそぶく)」と記載します。

当時の意味では、「嘯(うそぶく)」は、「口笛を吹く」ことを現しています。

つまり、「口笛を吹くようにさえずる鳥」という意味で、「ウソ」と呼ばれるようになったのでしょう。

江戸時代から始まった鷽替の神事とは?

いつの時代もそうですが、「不運なことが続くと、早くこの状態を終わらせて平穏な日々の生活に戻りたい」と願います。

「鷽替(うそがえ)の神事」は、そんな人々の願いから生まれたもので、江戸時代の太宰府天満宮で始まりました。

「鷽替(うそがえ)の神事」は、旧暦の正月(7日)に参詣者によって行われた行事が始まりとされています。

「鷽替(うそがえ)の神事」とは、鳥のウソを模して掘った木片を持ち寄ることで始まります。参詣者は木片を、こっそりと交換します。

そうすることで、「ウソを替える」ことになって、「除災招福」を願ったと言われています。

ウソという小鳥が神事に選ばれた理由

ウソという小鳥が「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれたのは、次のような理由です。

「不運なこと」や「間違ってしまったこと」などを「なかったことにしてもらう」、つまり「ウソにしてもらう」という願いからきています。

そのため、「ウソ」と呼ばれる小鳥が使われたのでしょう。

まとめ

ウソという名前は、鳥の鳴き声が口笛のような響きを持っていたため、「口笛を吹く」=「嘯(うそぶく)」から転じて「ウソ」と呼ばれるようになりました。

また、ウソという鳥は江戸時代から「除災招福」にも使われて大切に扱われていました。

但し、ウソが「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれたのは、名前だけではないでしょう。

ウソのおっとりとした仕草や、口笛のような声質を聞いて、人々が、可愛い小鳥だと感じたことも影響したのだと思います。

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