北部のアリが、巨大アリ塚を作る理由

高層ビル群 アリ
高層ビル群

一般的なアリ塚は、暖かい地域にシロアリが作ったものです。本物のアリが作る、アリ塚は、主に北の地域のアリです。記事では、巨大アリ塚を作らなければならない理由と、敵対するはずのアリが、スーパーコロニー内では、一緒に暮らせる理由を紹介しています。

日本にもあった超巨大なアリ塚

北海道の石狩浜にはエゾアカヤマアリというアリの巣が、10km以上も結合して連なってできた超巨大アリ塚があります。

石狩浜のアリ塚は、西暦2000年まで世界最大とされていたため世界中のアリ学者から注目された場所です。

西暦2000年頃になると、南ヨーロッパでアルゼンチンアリのスーパーコロニーが多数発見されました。

さらに、2004年にはオーストラリアのメルボルン近くで約100kmにも渡るスーパーコロニーが発見されました。このため、石狩浜のアリ塚の注目度は薄れました。

但し、日本でもスーパーコロニー(巨大アリ塚)があったのは事実です。

石狩浜のスーパーコロニーは、地下通路で連結されていて、およそ4万5,000巣で形成されていました。しかし、アリは同種のアリでも巣が異なれば敵対関係が生まれます。

何故、スーパーコロニーでは、異なる巣のアリが融合できるのでしょうか。この問題は、アリの研究者たちによって解明されました。

アリ塚を作るのはどんなアリなの?

巨大アリ塚を作るアリは、主に北部に生息するアリでした。テレビなどで報道される、一般的なアリ塚はオーストラリアやアフリカのものが紹介されています。そのほとんどは、シロアリが作ったものです。(ただし、ハキリアリの塚は南の地域にもあります)

巨大アリ塚を作るアリは、標高が高い所や、高緯度地域の涼しい所に生息するアリです。彼らはヤマアリです。ヨーロッパや、ロシアの森林地域では頻繁に見ることができます。

日本のエゾアカヤマアリも、アリ塚を作るアリです。エゾアカヤマアリは、北海道や本州の高原地域に棲んでいます。

アリ塚のサイズはさまざまで、直径や高さが1mを超すものはざらに見られます。アリ塚の素材は、枯れ葉や落葉を主にしたもので、小山状に形成されます。

アリ塚の地中には、空洞や坑道のような穴の道があります。その中の巣部屋で、卵や、幼虫、繭(まゆ)を育てています。

アリ塚を作る理由

アリ塚を作るアリは涼しい地域に生息していて、アリ塚の内部は、次のような環境になっています。

  1. アリ塚の内部は程よい湿度に保たれている。
  2. アリ塚の内部は太陽の熱を蓄える構造になっている。

このことから、巨大アリ塚を作る理由は、比較的寒冷地に生息するアリが、寒い時期にも快適に過ごすための工夫から生まれたものと考えられます。

巨大アリ塚のアリが共に暮らせる理由

アリ塚を作るヤマアリは、攻撃的な性質を持っています。理由は、小山状のアリ塚が目立つため、敵から標的にされることが多く、防衛のために攻撃的になったと考えられています。

しかし、スーパーコロニーは複数の巣がつながって作られたものです。
アリは同じ種でも巣が違うと外敵として攻撃し合います。それでは、複数の巣がつながって作られた巨大アリ塚のアリは、お互いを仲間として認識しているのでしょうか?

仲間意識を持つ仕組み

一般的なアリの社会では、敵、味方の識別に特別な化学物質が重要な役目を担ってきました。但し、スーパーコロニーのアリは、お互いが似通った匂いを身につけています。

そのため、スーパーコロニーのアリは、化学物質による識別が鈍っていました。

このことの意味を研究者は次のように考えています。

  1. 似通った匂いをしたもの同士のアリの間では、団結力を発揮するように作用しています。
  2. 異種の匂いのアリに対しては、極端な排撃性をもつように作用します。

このよううな理由で、お互いが似通った匂いを身につけているスーパーコロニーのアリは、共同生活が可能なのでしょう。

まとめ

北部地域に生息するアリが、巨大アリ塚を作る理由と、別の巣を繋げてスーパーコロニーを形成しても争はない理由は、次のようなものでした。

《アリ塚を作る理由》
多くのアリ塚は、北部の比較的寒冷地域に作られています。
太陽の熱で温められる大きなアリ塚の内部は、程よい湿度に保たれています。

その為、アリ塚は、寒い時期にも快適に過ごせるように作られたのでしょう。

《スーパーコロニーが形成される理由》
同種のアリでも巣が違うと、敵として認識してしまいますが、スーパーコロニーのアリは、似通った匂いを身につけることで同じ仲間という認識に変えていました。

寒い地域のアリは、寒い冬を生きのびるのは大変です。

寒冷地のアリは、単独のアリ塚よりも、巨大なスーパーコロニーの方が、快適に暮らせると考えたのでしょう。

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