サムライアリは身近にいるアリですが、生き方は、野蛮で力まかせです。サムライアリの女王は、他のアリの巣を乗っ取って、奴隷にしたアリに、身の回りの面倒を見てもらいながら生活しています。強引で自分勝手ですが、何故か寂しさを感じてしまいます。
サムライアリの不思議な生き方
サムライアリは、特殊な生態の有名なアリですが、私たちの身近にいるアリです。日本の各地にもいます。東京にもいます。
アリは、イソップ物語のアリとキリギリスのお話に代表されるように、働き者として尊敬されています。
ところが、自分では何もできなくて、奴隷のクロヤマアリ等に世話をしてもらわないと生活できないアリがいます。そんなアリが、勇ましい名前のサムライアリです。
サムライアリは、飴を食べる時にも奴隷のアリから口移ししてもらいます。自分で餌を食べることすらできません。
働き者の代表とされるアリの世界に、こんなアリがいるのは何とも不思議です。
しかも、アリの生き方が嫌になった特別なひねくれ者という訳ではなく、アリの中の一種族として社会を形成しています。
サムライアリの女王による巣の乗っ取り
サムライアリの女王は、普通の女王アリがするような巣作りをしません。
そのため、結婚飛行を終えたサムライアリの女王は、クロヤマアリ等の巣を乗っ取って、種族を増します(7月〜8月頃)。
巣の乗っ取り方
結婚飛行が済んで子孫を残せるようになったサムライアリの女王は、クロヤマアリの巣を見つけると、巣穴に侵入します。そして、クロヤマアリの女王を噛み殺すことから始めます。
数日間は、侵入した女王アリから出る匂い(フェロモン)が異なるために、クロヤマアリの働きアリから執拗な攻撃を受けます。
サムライアリの女王は、時が経つと、殺したクロヤマアリの女王の匂いを自分の体に付けます。
その後、クロヤマアリの働きアリは、侵入した女王アリを自分たちの女王アリとして世話をするようになります。
サムライアリの女王は、無事に巣を乗っ取ると、クロヤマアリの働きアリから手厚い世話を受けて、卵を産み続けます。
サムライアリの女王から生まれるのは、サムライアリの卵ですが、クロヤマアリは、彼らの面倒もみるようになります。
サムライアリの働きアリが働く時
サムライアリの女王が巣の乗っ取りに成功して、暫くすると、サムライアリは次々に生まれてきて数を増やします。ところが、サムライアリは生活能力がないため、自分では何もできません。
その上、時の経過と共に、寿命が尽きたクロヤマアリの数は減ってしまいます。このままでは、役立たずのサムライアリばかりになってしまいます。
そんな時、今まで何もしなかったサムライアリの働きアリは、一斉に巣の外に出て集団を作ります。
そして、特定の方向に向かって行進を始めます。目的は、他のクロヤマアリの巣から、卵や幼虫、蛹(さなぎ)を略奪することです。
クロヤマアリの巣から卵などをくわえて出てくる、サムライアリの動きは俊敏です。
この時だけは、とても何もできないアリとは思えないような活躍ぶりです。
これらの一連の行動は、「サムライアリの奴隷狩り」と言われるものです。
サムライアリが巣に持ち帰ったクロヤマアリの卵は、巣内で働く奴隷のクロヤマアリの世話を受けて成長します。
卵や蛹(さなぎ)から成長したクロヤマアリは、やがてサムライアリの奴隷として働くことになります。
このように、サムライアリの働きアリの仕事は、他種のアリのコロニーからの略奪行為をすることです。
何とも情けない話です。確かに統制はとれていますが、勤勉な働き者として集団生活をしているアリの概念が変わってしまいそうです。
敵と味方を区別する匂い
アリは、同じ種でも、コロニーと言われる巣ごとに匂いで区分けされています。そのため、同種のアリでも巣が違うと争います。
そんな社会で奴隷として連れて来られたアリが、敵として認識されないのは何故でしょうか?
基本的に同じ巣のアリは、全て女王の匂いを付けられます。
そのため、コロニー内のアリは全て同じ匂いになって、仲間として認識されるようになるからです。
まとめ
何だか哀しくなりますが、サムライアリは、奴隷アリに世話をしてもらわないと何もできないアリです。
サムライアリという命名にも、もの悲しさがつきまといます。
そもそも勤勉で真面目を象徴するアリに、このような生き方をする種がいることに驚きを隠せません。
但し、サムライアリの女王が、クロヤマアリ等の巣の乗っ取りに成功する確率は不明です。
多くの、サムライアリの女王は、他種のアリの巣に侵入すると、巣内の働きアリから執拗な攻撃を受けて死んでしまうそうです。
世の中は、思い通りには進まないものですね。