始祖鳥の翼の色と飛行能力

化石
化石

化石だけでは、始祖鳥の色は分かりません。しかし、始祖鳥の羽の標本分析と、現在の鳥にある同器官の比較などから、翼の色がほぼ特定されました。さらに、骨格分析などから、飛行能力も推定されました。記事では、これらの分析結果を紹介しています。

始祖鳥の羽の標本の分析などから推定された外形色

古代の生物の体の色はわからないものが多いと思います。色は化石に残らないからです。
ところが、始祖鳥の風切り羽の標本であるザ・フェザーから、メラノソームという、小器官の痕跡が確認され、色を特定できました。

羽の標本分析などから推定された翼の色

メラノソームは、顕微鏡でやっと見つけることができるような小さな器官ですが、メラノソームは、現在の鳥類の羽根にもあります。

現存する87種の鳥のメラノソームと比較することで、ザ・フェザーの色が黒色と推測できました。黒色の確率は、ほぼ95%の確率です。

但し、あくまで、標本から確認できた情報です。始祖鳥の翼全体の色までは判りませんが、黒色の色素はケラチン質という、羽を丈夫にする成分です。そのため、黒色で覆われていた可能性は高いでしょう。

始祖鳥の翼全体が、カラスのように黒色をしていたのかもしれません。

始祖鳥とはどんな生き物なの?

次に、化石などの発見年代や化石の分析結果から推測される飛行能力などについてまとめて紹介します。

始祖鳥の化石発見の歴史と状態など

始祖鳥の化石が発見された歴史や、地層及び保存状態などは、次のようなものでした。

《始祖鳥の発見と学名》
始祖鳥は1861年に発見されています。チャールズ・ダーウィンの、種の起源の出版は1859年ですから、この直後に発見されています。つまり、進化論で騒がれている最中の発見です。

始祖鳥の学名は、太古の翼を意味する、アーケオプテリクス・リソグラフィカです。

《始祖鳥の化石の状態》
今までに、10体の化石が報告されています。それらの化石発見は、全て1億5000万年前のジュラ紀後期のドイツ南部の地層です。

化石は、10体もあるので、ヨーロッパ各地の博物館が所蔵しています。特に保存状態が良くて、腕を広げた状態で発見されたベルリン標本は、頭部が完全に残っていて、歯も確認できる標本です。

ベルリン標本は、教科書などにも写真が掲載されているので、見た人は多いでしょう。その大きさは全長50㎝程のもので、一目見て鳥と認識できます。

このベルリン標本によって始祖鳥は、歯をもっていることが分かりました。始祖鳥は鳥類と爬虫類をつなぐものとして認知されるきっかけになっています。

始祖鳥の飛行能力

発見された化石の分析結果から、始祖鳥は大きな翼をもっていますが、空を飛ぶために必要な胸筋や胸骨の発達はみられません。肩の関節の分析でも腕を肩以上に上げることが難しいことが分かっています。

但し、飛行できる動物は、目が良いという特徴があります。研究者が、飛行に必要な視覚神経とバランスを司る三半規管に着目して調査した結果、両器官ともに優れていることが確認されています。

以上の分析結果から、研究者は、始祖鳥の飛行能力について、次のように推定しています。
『始祖鳥の飛行能力は、滑空飛行が主体で、現在の鳥のように、はばたく「飛翔」はできなかった』と推定。

まとめ

始祖鳥は、化石が発見されていたため、どのような生物なのかは分かっていました。但し始祖鳥の、体の色までは分かりませんでした。化石の色は消失するからです。

ところが、羽の標本分析から色を特定できる小さな器官が発見されました。この小器官と、現在の鳥にもある同器官との比較で、翼の色は、黒と推定されました。統計分析によると95%の確率で特定されています。

ただし、これは一部の標本分析の結果だけですから、翼全体が黒とは断定できません。しかし、黒色には、強度を強くする物質もあるため、ほぼ間違いないだろうと言われています。

その他、化石の骨の分析などから、始祖鳥は鳥のように羽ばたく飛翔は出来なかったようです。始祖鳥の飛行は、滑空飛行を主体にしたものだったと推定されています。

尚、視覚神経とバランスを司る三半規管の調査で、目が良いことが分かっています。そのため、始祖鳥が飛行したのは間違いないでしょう。

さらに、2018年には、始祖鳥の飛翔能力の新発見と題して、フランスの研究チームの発見内容が報道されています。2018.3 英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに論文発表。

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