増えすぎてしまったタンチョウの弊害と対応策

タンチョウの写真 ツル
タンチョウの写真

北海道のシンボルのタンチョウは、一時絶滅の危機にありました。鶴居村は、タンチョウの保護活動で数を増やすことに成功しましたが、数が増えすぎたため農作物への被害も発生しています。共生の道を選んだ鶴居村の、鴨居モデルの取組状況等を紹介しています。

鶴居村の増えすぎたタンチョウ

北海道の県鳥は、国の天然記念物のタンチョウです。タンチョウには、過去に絶滅の危機がありました。危機を救ったのは、共生の道を選んだ北海道の、鶴居村(つるいむら)の手厚い保護活動でした。

鶴居村には、環境省が委託した大きな給餌場(きゅうじば)が2ヶ所あって、およそ600羽が越冬します。ところが、新聞記事によるとタンチョウの数が増えすぎて、弊害もでてきました。

鶴居村とタンチョウの保護活動

鶴居村は、北海道東部の釧路市から40km程の北西部に位置しています。南部には釧路湿原などもあります。人口は、約2,500人の過疎地域です。鶴居村は、本州から富裕層が移住したことや、日本一美しい村連合などで話題になった村です。

釧路湿原は、日本で最大級の広さを誇る湿原です。東京23区が入ってしまう程の広い地域です。

タンチョウを支えた保護活動

釧路湿原には多くのタンチョウが飛来していましたが、開発や乱獲で著しく数が減少して、一時は絶滅したと考えられていました。

ところが、1924年に鶴居村で、タンチョウ10数羽が目撃されました。そして、1950年代の初頭には、現釧路市阿寒町と鶴居村で、人口給餌(きゅうじ)に成功しています。
その後、人口給餌のおかげで、タンチョウは少しずつ増加していきました。これを受けて、当時の環境庁は、給餌事業を始めています。

2017年度のタンチョウ保護研究グループの調査結果では、1,600羽程になりました。
タンチョウ保護研究グループは、NPO法人です。このグループは、釧路湿原地域のタンチョウの数の確認や、生育環境の調査等をしながら、情報を広く伝える活動などをしています。
また、鶴居村では、日本野鳥の会を中心にして、次のような保護活動も行っています。

  • 水辺周辺のやぶはらい活動
  • 小中学児童生徒による越冬分布調査(環境省)活動への参加
  • 観測所や案内板の設置活動

増えすぎたタンチョウの弊害とは?

以上のような保護活動のおかげで、タンチョウの生息数は大幅に改善しましたが、問題も報告されるようになりました。
鶴居村の農家(80戸)への調査(2016年)を行なったところ、次の結果を得ています。80戸中68戸で農場内へのタンチョウの飛来が確認されています。弊害は、次のようなものでした。

  • 牛のすぐ近くに、タンチョウが舞い降りるため、驚いた牛が鉄条網に激突した。
  • コーン畑に、タンチョウが舞い降りて、芽を引き抜いてしまう。(花火で脅かしても効果なし)

また、北海道全域では、タンチョウの交通事故も増えています。

対策活動

タンチョウの増加に伴ってさまざまな弊害のため、環境省ではタンチョウの生息地の分散を促そうとしています。

環境省の施策は、大規模な給餌場のエサの量を少しずつ減らして、他の地域に分散させる方法です。

ただし、この方法では、エサに困ったタンチョウが農作物を食べてしまう懸念もあります。

そのため、鶴居村では、タンチョウと共生する村づくり推進会議を設置しています。これは、官民一体でタンチョウと共生する方法を継続的に検討していくものです。

これが、タンチョウとともに暮らしていく、鶴居モデルと言われるものです。

まとめ

北海道のタンチョウにも絶滅の危機があったとは知りませんでした。鶴居村のことも、今回初めて知ったのですが、村の名前だけ見てもタンチョウの村ということが判ります。

難しい問題ですが、タンチョウとともに共生したいという鶴居村の人々の気持ちには共感します。

鶴居モデルとは、タンチョウと共生する村づくり推進会議です。おそらく、問題が起きたら、タンチョウと、人にとって良い方法を、直ぐに行うのでしょう。

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