6月だけ活動するツンドラ地帯の蛾

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北極圏のツンドラ地帯に生息する蛾の幼虫は、凍り付いた状態では、-70℃でも生存します。この蛾の幼虫は、暮らし方も独特で、日照時間の最も長い6月の1ヶ月間だけ活動しています。暮らし方も変わっていて、一日の大半を、ひなたぼっこで過ごします。

北極圏に棲んでいる蛾

蛾(ガ)は、暑い夏の日には、夕暮れ時まで暗い森に潜んでいます。そして、夕暮れ時に街頭に引き寄せられて飛んでくる虫、というようなイメージがあります。

ところが、永久凍土に覆われたカナダ北部の島から、グリーンランドのツンドラ地帯に生息する蛾は、過酷な条件で暮らしています。

ハイアークティックモスと呼ばれる蛾です。名称は、スマートですが、この蛾は、6月の1ヶ月間だけ活動して、残りの11ヶ月間は冬眠しています。

ハイアークティックモスとはどんな蛾なの?

ハイアークティックモスの姿は、2㎝程の大きさの焦げ茶色をした普通の蛾です。

ハイアークティックモスが棲んでいるグリーンランドの冬の気温は-20℃から-10℃です。

グリーンランドは、夏でも+10℃以上になることは稀と言われるような寒い気候です。

こんなに寒いところに産み落とされたハイアークティックモスの幼虫は、凍り付いた状態では、-70℃でも生存できるそうです。

なお、グリーンランドの最低気温は、1950年代に、-70℃の記録があります。

ハイアークティックモスの生活

ハイアークティックモスが活動するのは、6月の1ヶ月間だけです。この地域では、6月が年間を通じて最も日照時間が長いからです。

ハイアークティックモスの成虫は、6月に卵を産みます。ハイアークティックモスが、成虫になる前は、全身が毛に覆われている毛虫のような幼虫です。

ハイアークティックモスの幼虫は、6月の1ヶ月間だけ活動しています。活動といっても、太陽の熱を吸収するため、半分以上は、ひなたぼっこをして、残りの時間でエサの植物を探す生活です。

そのために成長速度もゆっくりしていて、成虫になるのに7年もかかります。

幼虫から成長になる年には、活動する1ヶ月間に、脱皮をして成虫になります。但し、この1ヶ月の間に伴侶を見つけて直ぐに卵を産まなければなりません。

そして、卵を産むと生涯を終えます。

北極圏付近の気候とハイアークティックモスの行動

北極圏の気候は、夏の間は太陽が沈みません。そのため、ハイアークティックモスの幼虫は、白夜になって日が落ちても地平線付近に留まる太陽の方向に体を向けています。

理由は、太陽光線を浴び続けるためです。

まとめ

北極圏のツンドラ地帯に生息するハイアークティックモスは、日照時間の最も長い6月だけ活動をしています。

この地域でも他の生物は、7月ごろまで夏の暮らしを楽しみます。でも、ハイアークティックモスは、子孫を残すために、気候変動があった時のことも考えているのでしょう。

ツンドラ地帯で観測された最低気温は、-70℃が記録されています。でも、ハイアークティックモスの幼虫は、凍ってしまうと-70℃の気温でも生存できます。稀に起こる超低温を想定して耐えられるような体の構造なのでしょう。

蛾のイメージは、蝶のようには艶やかではないが、三角形の翅を駆使して凄いスピードで飛ぶ、夏を連想させる昆虫でした。蛾が、ツンドラ地帯のような超低温の地域にも進出している生物とは知りませんでした。

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