ハクチョウは、約6000フィート(1800メートル)の高度で渡りの飛行をします。上空を飛ぶと気圧が低下して、血液の沸点も変わります。記事では、渡りをするハクチョウが、高度1800メートルを選んだ理由を、気温と空気密度などから検討しています。
ハクチョウの高度飛行の身体への影響
ハクチョウが渡りをする時の飛行高度は、約6,000フィートと言われています。1フィートはおよそ0.3メートルですから、ハクチョウはおよそ1,800メートルの上空を飛行していることになります。
気温と気圧低下に伴う身体への影響
(1)気温と空気密度
気温は高度1,000フィート毎に-2℃低下するので、6,000フィートの時は、地上の気温よりも12℃低くなって、空気密度は60mmHg低下しています。
(2)気圧低下に伴う血液の沸点
高度が高くなって気圧が低下した時には血液の沸点も低くなります。ハクチョウの体温は、凡そ40℃です。40℃が1気圧(760mHg)の100℃のように沸騰してしまう高度は、57,900フィート(19,300メートル)です。
ハクチョウが渡りをする高度6000フィート(1,800メートル)は、数値上は余裕があります。
6,000フィート前後なら、大きな揚力を得ることのできる空気密度があって、体温へも影響もないと考えられます。このような理由で、6,000フィート前後を選んでいるのでしょう。
鳥類の脅威的な高度飛行記録
記録されている鳥類の高度飛行には、次のようなものがあります。
- 1953年にイギリスの登山隊がエベレスト(チョモランマ)の登頂に成功した時、頂上付近(8,830メートル)で、キバシガラスの群を観察しています。
- 1976年に日本のマナスル登山隊は、7,000メートル付近をツルの群がV字編隊で飛んでいるのを目撃しています。
8,000メートル付近の気温は、-40℃程度です。しかも、猛烈な偏西風が吹いていて飛行機でも極めて危険といわれている条件です。目撃されたツルは、アネハヅルという種で、モンゴル付近で繁殖し、ヒマラヤを超えてインド周辺で越冬します。
アネハヅルは、上昇気流を利用して高度を上げてから一気に8,000メートルクラスの山脈を超えます。鳥にしかない羽毛や、気嚢(きのう)を備えた酸素供給能力の高さなどが、このような驚異的な能力を生み出しているのでしょう。
まとめ
ハクチョウが渡りをする時の飛行高度は、およそ1,800メートル上空です。この時の気温は、地上よりも気圧が下がるため、沸点も下がります。あくまで仮定の話ですが、40℃のハクチョウの体温が沸騰するようなことになれば生きられません。
1800メートルの高度は、血液の沸騰への余裕度や、気温変化、空気密度に対して、ハクチョウには、問題ない高度です。
ハクチョウが渡り飛行をするのに、1800メートル前後の高度は丁度良いのでしょう。ハクチョウにとって、高度1800メートルは、大きな揚力が得られる空気密度です。そして、体温にも影響しない高度だからでしょう。
尚、アネハヅルという鳥は、8,000mクラスの山脈を超えることができます。鳥にしかない羽毛や、気嚢(きのう)を備えた酸素供給能力の高さなどが、驚異的な飛行能力を生み出しているのでしょう。