鳥は飛べるので、想像を超えるような渡りをします。鳥の渡りは、人間が見ると疑問点が多く、世界中の研究者が注目している分野です。まだ、多くのことが分かっていませんが、近年では追跡装置技術の進化などにより確認されたことも多くなってきました。
渡り鳥の驚異の記録
渡り鳥の驚異の記録として、オオソリハシシギと、ハイイロミズナギドリについて紹介します。
オオソリハシシギ
オオソリハシシギは、シギ類の一種で、40㎝程の大きさの鳥です。くちばしに特徴があります。オオソリハシシギのくちばしは、長くて、やや上に反っています。日本でも春先や秋に干潟や砂浜などで観察されています。
この鳥の繁殖地は、アラスカ西部等の北極圏ですが、遠くはオーストラリア東部やニュージーランド方面まで飛行します。オオソリハシシギは、越冬する渡り鳥です。
日本に来るのはアラスカ西部から飛来して、西南アジアや東南アジアなどで越冬した一部が旅鳥として渡来したのでしょう。
この鳥の総延長移動距離は7,000km~12,000kmに及びます。しかも無着陸で飛び続けると言われています。
11700kmを飛んだ雌の記録をみると、アラスカを飛び立って、およそ8日後にニュージーランド北部に到着しています。飛行期間は、どこにも着陸しないで飛び続けていました。
ハイイロミズナギドリ
ハイイロミズナギドリはニュージーランドで繁殖する夏の海鳥です。驚いたことに年間の総延長移動距離は65,000kmにもなると言われています。
ハイイロミズナギドリは繁殖(巣を作って産卵、子育て)した後で、ニュージーランドから海上をやや東南方向に飛行します。そして、南極付近や南アメリカ沿岸に向かいます。
その後、太平洋上を北上して、日本、カムチャツカ、アラスカ、或いはカリフォルニア沿岸等に向かい、しばらく滞在します。
その後、再び、太平洋上を南下してニュージーランドに戻ります。
この間の総延長移動距離が65,000kmと膨大なものになることが確認されています。
65,000kmは、地球1周半以上の距離です。
尚、ハイイロミズナギドリは海鳥のため、陸地ではなく海面に降りて休憩等をします。
ハイイロミズナギドリの移動を大きく分けると、11月~翌年の5月は南半球で滞在し、6月~10月は北半球に滞在します。つまり、ハイイロミズナギドリは、1年中エサが豊富で暖かい夏を満喫していたことになります。
ハイイロミズナギドリは、特別な飛翔能力を駆使して、地球規模の季節の移り変わりを、無いものにした鳥と言っても良いでしょう。
ちなみに、ハイイロミズナギドリは、飛翔能力だけでなく、潜水能力にも秀でた鳥です。記録によると、68メートルまで潜水できることが判っています。
尚、蛇足ですが、ペンギンの潜水能力は突出していて564メートルという記録もあります。ハイイロミズナギドリの潜水能力は、ペンギンに次ぐものです。
まとめ
紹介した内容は、驚きの記録ばかりです。これらのデータは、追跡装置の小型化や通信技術の進化で確認されています。
これからも、様々な新データが取得されることが期待されます。確度の高い新データのおかげで、渡り鳥の能力や、何のために渡をするのか等の疑問点も解消されるでしょう。
また、このようなことが判るのも鳥を観察して情報を発表している研究者がいるからです。