昆虫は、傷の修復ができません。昆虫は、外骨格に覆われています。外骨格が固いので、擦り傷程度の軽い傷でも修復できないのでしょうか? しかし、同じ外骨格のザリガニは脱皮して修復します。記事では昆虫が擦り傷でも直せない理由について紹介しています。
昆虫は外骨格があるために擦り傷も直せないの?
昆虫の幼虫は、細胞分裂して再生しますが、成虫になると細胞分裂しなくなります。硬い外骨格があるからでしょうか?
そんなことはありません。
外骨格のあるザリガニは、足が取れても再生できるし、脱皮を繰り返しながら成長します。
人の体でも部分的に再生します。
人の手足は再生しませんが、髭や爪は再生します。また、皮膚の表面に軽い傷をつけても、かさぶたができて、新しい皮膚が作られます。
このようなことが出来るのは、細胞が分裂する能力を持っているからです。つまり、昆虫は、変態して成虫になると、細胞分裂できなくなるのでしょう。
では、何故、成虫になった昆虫は細胞分裂できないのでしょうか?
昆虫が細胞分裂しない理由
多くの生き物を全体から見ると、種全体の本能的な行動は、子孫を残すことを中心にプログラムされているように感じられます。
一般的に成虫になった昆虫の寿命は短いと言われています。
昆虫が成虫になるのは、子孫を残すためでしょう。昆虫の仲間には、生殖行為のためだけに成虫になって、飲まず食わずで生涯を閉じる種もいるほどです。
つまり、昆虫の成虫は短寿命です。
そのため、昆虫の成虫には、体を修復する再生能力は必要ないのでしょう。
昆虫の発育形態
幼虫と成虫の姿形に大きな違いが無い昆虫もいますが、多くの種は、幼虫から成虫になる時に、姿形を大きく変えてしまいます。
昆虫は、成虫に変化します。する過程で、蛹(さなぎ)の期間が無い不完全変態と、幼虫からさなぎを経て、成虫になる完全変態です。
これとは別に、変態しないで成虫になる例外もいます。
但し、多くの昆虫は、幼虫の期間が長くて、成虫の期間は短命です。
《不完全変態の特徴》
- 幼虫期の翅(はね)や生殖器官が未発達。
- 脱皮を繰り返しながら成長して完成形に近づく。
- 幼虫から成虫になる過程で蛹(さなぎ)の期間は無い。
《完全変態の特徴》
- 幼虫期と成虫の姿形が、著しく異なる。
- 翅などの発育は表皮の下で進行。
- 幼虫期の最終齢の後、蛹(さなぎ)の期間を経て成虫になる。
昆虫の体の特徴
昆虫の成虫の体表面は、クチクラで作られた外骨格という固い組織で作られています。
昆虫のクチクラとは?
昆虫のクチクラは体の表面を覆っている外骨格を作っている物質です。外側の「上クチクラ」と、細胞に接する「原クチクラ」の2層構造です。「原クチクラ」は、繊維状のキチンと強固に結び付いたタンパク質で、強さと硬さがあります。
簡単に言うと、クチクラは、表皮を作る細胞が、体を守るために分泌した膜のことです。昆虫のクチクラは、体を支える骨と、体を守る鎧(よろい)の役目を担っています。
まとめ
昆虫は幼虫時代には細胞分裂をして軽い傷なら治すことが可能です。ところが成虫になると、再生できません。
尚、昆虫と同様に、外骨格のザリガニが脱皮できるのは、重力が少ない水中だからでしょう。
多くの生き物は、子孫を残すことを中心に行動しているように見えます。昆虫が、幼虫から成虫になる目的は、子孫を残すためです。
昆虫の成虫は、子孫を残すことが目的なので短寿命なのです。成虫の期間は短いです。そのため、体を修復する再生能力は必要ないのでしょう。
逆に寿命が長い生き物の場合はどうでしょうか?
寿命が長い生き物の場合
寿命が長い生き物は、繁殖期間も長くなるため、途中で怪我を負っても直ぐに死んでしまっては困ります。種の子孫を増やすチャンスをつぶしてしまうからです。
つまり、怪我を直す修復能力は必須なのです。
尚、ひょっとしたら、昆虫に居心地の良い環境を提供すれば、案外、長寿命になるのかもしれません。そうすれば、擦り傷なども修復できる体も必要になりますね。