ミツバチによる花の蜜の運び方や、ハチミツの作られる仕組みについて紹介しています。ハチミツは、単純に花の蜜を集めて貯蔵したものではなく、ミツバチがいなければ作られない貴重なものでした。ハチミツ作りに精をだすミツバチを愛おしく思えるでしょう。
ハチミツの作られ方
ハチミツは、ミツバチがお花畑から集めて貯蔵したものと考えている人もいるでしょう。
ところが、ハチミツは花の蜜をミツバチの体で加工することで作られていました。
花の蜜の運び方
ミツバチの口から吸った花の蜜は、腸の手前にある、蜜胃(みつい)と呼ばれる袋に蓄えられます。
蜜胃と腸の間は弁で閉じられています。そして、蜜胃が一杯になると、ミツバチは花の蜜を吸うのをやめて巣に持ち帰ります。
ミツバチの体には、花の蜜を食べて腸まで到達しても、消化吸収しないような仕組みがありました。
食事時以外は、ミツバチの腸の手前にある、袋の蜜胃(みつい)と腸は、弁で閉じられています。ミツバチが食事の時には、弁は開いて腸とつながります。
ハチミツの加工方法
ミツバチは、花の蜜を口で吸って巣に持ち帰ります。
口から吸われた花蜜(ショ糖)は、ミツバチの唾液に含まれる酵素などによる化学変化で、ブドウ糖と果糖に分解されます。
ミツバチは、巣に戻ると、他の働き蜂に蜜を口移しします。蜜を貰った働き蜂は、さらに別の働き蜂に、口移しで蜜を与えます。
巣に持ち帰った蜜は、このようにして働き蜂の体内で何度も加工されます。そして、花の蜜は、完全にブドウ糖と果糖に転化します。
ミツバチの体内で化学変化した蜜は、最後に巣内に吐き出されて、貯蔵されます。
さらに、巣内に集められた蜜は、ミツバチの羽ばたきで水分が蒸発して濃縮されます。そして、最後にフタがされて貯蔵されます。
これが、ハチミツです。
ミツバチによって濃縮された、ハチミツの糖分は、花の蜜だった時に40%程だったものが80%にもなっています。
ハチミツが長持ちする理由
ハチミツには、特別な抗菌作用があります。その為、長い期間保管しても腐らないのです。
ハチミツの特別な抗菌作用
ハチミツの抗菌作用は、次の2つの理由です。
- 水分を発散させて濃縮したハチミツは、浸透圧が高くなっています。そのためハチミツ中に細菌が入っても、細菌は細胞内の水分を奪われて死滅してしまいます。
- ミツバチの唾液には微量のグルコースオキシダーゼという物質が含まれています。グルコースオキシダーゼは、活性酸素の一種の過酸化水素を発生させます。そして、過酸化水素の強い酸化力で、細菌を死滅させてしまいます。
ミツバチが同じ花の蜜を集める理由
ミツバチは、野原に飛んで行って花蜜を採集してきます。そのため、さまざまな花の蜜が混ざってしまうことが懸念されます。
しかし、お店で販売しているハチミツは特定の花毎に分けられています。
特定の花のハチミツを大量に集められる理由
ミツバチは、一つの花を採集すると、可能な限り、その花の蜜だけを集めるという性質を持っているからです。
そして、豊富な蜜源を見つけたミツバチは、激しく飛んで仲間のミツバチに知らせます。
これが、特定の花のハチミツを大量に集めることができる理由です。
ミツバチの後ろ脚が、太くなる理由
花蜜を収集するミツバチは、後ろ脚に花粉を集めて丸くなったように見えることがあります。
これは、頭部から腹部にある沢山の毛に、花粉が付着したものが集められて団子になったものです。
この花粉団子は、後ろ脚にある「花粉かご」と呼ばれる所に集積して、大きな団子になります。これがミツバチの花粉団子で、後ろ足が太くなる理由です。
ミツバチは、花粉団子を巣に持ち帰ってから幼虫のエサにします。
まとめ
ハチミツは、ミツバチがせっせと集めた花の蜜の集まりだと思っていました。ところが、ハチミツは、ミツバチの体内で化学的に加工されて作られたものでした。
ミツバチは、唾液に含まれる酵素の働きで、花の蜜(ショ糖)をブドウ糖と果糖に分解した後で、水分を飛ばしていました。こうして加工された蜜の糖分は、花蜜時の2倍(80%)になっていました。
ブドウ糖と果糖は、これ以上分解されることがない単糖類です。このような理由で、ハチミツは、体内では消化器官に負担をかけないで短時間で吸収されます。
また、ハチミツは、侵入した細菌を死滅させるため、腐りにくいと言われています。古代エジプトのツタンカーメン王の遺跡から発見されたハチミツは腐っていなかったそうです。
これで単純に花の蜜を吸った時と、ハチミツを食べた時の違和感が分かりました。
ミツバチの体内で加工されたハチミツは、花の蜜が持っていない、別のものに変わっていたのですね。