女王アリのいないアミメアリの社会

アリ
アミメアリ

アミメアリは普通のアリとは違うの?

「アミメアリ」というアリは、3mm程の小さな茶褐色のどこにでもいるアリです。体が小さくて、甘いものを求めて家の中にも入りこむため、大抵の日本人なら見たことがあるアリです。

ところが、「アミメアリ」は特定の巣を持たないとか、女王アリがいないなど、普通のアリとは、ちょっと違っています。そんな「アミメアリ」の生態について整理してみました。

アミメアリとは?

「アミメアリ」は、東南アジアや、日本全国に分布している、3mm-3.5mm程のサイズのアリです。「アミメアリ」を拡大して見ると、腹部は普通のアリのように丸くてすべすべしていますが、頭と胸には、独特の網目のしわ模様があることから、「アミメアリ」と命名されました。

「アミメアリ」を学問的に分類すると、アリ科、フタフシアリ亜科、アミメアリ属の「アミメアリ」種になります。

アリの体は、「頭部」、「腹部」、「腹柄節(ふくへいせつ)」、「腹部」に分かれています。「アミメアリ」の体の特徴は、「頭部」、「腹部」に、しわ模様があることと、「腹柄節(ふくへいせつ)」が2つあることです。

「腹柄節(ふくへいせつ)」

「「腹柄節(ふくへいせつ)」というのは、「腹部」と「腹部」を繋ぐ、くびれのようなトゲのことで、全てのアリが持っていますが、1つだけ有る「ヤマアリ属」や「ハリアリ属」と、2つ有る「フタフシアリ亜科」に分けられます。

ちなみに、「「腹柄節(ふくへいせつ)」は、ハチから進化したアリだけが持っていて、アリ以外の昆虫には有りません。ハチにも無い、アリの体の特徴と言えるものです。

アミメアリの変わった特徴

「アミメアリ」は、住みかになるような巣を作らないで、庭の石の下や倒木の下などにいて、食べ物が少なくなると、すぐに「たまご」、「幼虫」、「さなぎ」を抱えて引っ越してしまいます。

家にしばられて、がんじがらめになっている人からみると、何と自由な生き方に見えると思います。

そして、「アミメアリ」の最大の特徴は、女王アリがいないことです。では、どうやって子孫を残すのでしょうか。

アミメアリの子孫の残し方

「アミメアリ」には女王アリはいませんが、普通の働きアリが少しずつ卵を産むことで大家族が維持されています。

普通のアリは、女王アリを頂点にした分業を行う社会性昆虫として暮らしていますが、「アミメアリ」は、全員が同じ階級で、同じ仕事に従事しているようです。

そのため、「アミメアリ」には、戦闘をするためのサイズの大きな働きアリもいません。雄アリは少しだけいますが、存在の役目は担っていません(現在までの研究では、雄の役割が確認されていないという方が正しい表現になります)。「アミメアリ」は単為生殖のため、雄は必要ないからです。

アミメアリに女王アリがいない理由

「アミメアリ」には、女王アリがいません。それは、役割分担をするアリの社会では極めて特殊です。アミメアリに女王アリがいない理由は、まだ明確ではありませんが、次のような理由から、進化しなかったアリという風に考えることもできます。

それぞれの働きアリが、卵を産んで、働きアリたちが皆で子育てをするというアミメアリのような社会では、「突然変異で、卵は多く生むのですが、他の仕事はいっさいしないという、ちゃっかりモノのアリが生まれる可能性があります。」

この場合、「卵を多く産んで、仕事をしない突然変異体のアリ」の遺伝子を受け継いだ、次の世代では「仕事をしないアリ」の比率が高くなって、やがてアリの集団社会は成立しなくなってしまうでしょう。

そんなことになったら、撲滅してしまうかもしれません。

つまり、1匹の女王アリが頂点にいて、多くの働きアリを産むという、他の種類のアリの社会は「アミメアリ」の社会構造から進化した姿なのかもしれないということです。

 

社会性昆虫の性質を一部放棄したアミメアリの社会

以上のように「アミメアリ」は、集団で行動するアリの社会を持っていますが、女王アリを頂点とした明確な役割分担をしていません。そのため、戦闘を専門で行う、体の大きな戦闘アリもいません「アミメアリ」は、餌をとるアリや、子育てをするなどの専門のアリもいません。皆で、全ての仕事をして働きます。

社会性昆虫という枠組みに当てはまらない「アミメアリ」は、多くの研究者の研究対象になっています。やがては、女王アリのいない「アミメアリ」の社会構造の意味も明らかになることでしょう。

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