鳥の編隊飛行は合理的な飛び方だった

渡り鳥の編隊飛行
渡り鳥の編隊飛行

渡り鳥などのV字編隊飛行は、長距離を飛ぶためのエネルギーを節約するための無くてはならない手法と言われています。記事では、ロンドン大学獣医学博士のSteven Portugal氏による編隊飛行の分析結果を、分かりやすく紹介しています。

合理的な鳥の編隊飛行

白鳥等の大型の鳥が群れで飛ぶ時に、逆V字型や、への字型で飛ぶ姿は、頻繁に目撃されます。これは、翼を上下動させた時の、翼端渦流(よくたんかりゅう)と呼ばれる空気の流れで、エネルギーを節約しているためです。

白鳥などの鳥は、数千キロも渡りをするために、想像以上に省エネ飛行は必須なのでしょう。

翼端渦流とは?

鳥が翼を上下すると空気は押されます。鳥は、その反動で身体を持ち上げられて飛ぶことができます。

この時、翼の下側は気圧が高く、上側は気圧が低くなります。つまり、体を上に引っ張り上げるような揚力が働きます。

ところが、翼の端の方では、揚力は生まれません。気圧の高い空気は翼の先端方向へ移動して、先端部の下から上へ移動してしまいます。

そのため、翼の端では、渦のような上昇気流になります。これが、翼端渦流(よくたんかりゅう)と言われるものです。

翼端渦流による空気の上昇気流を後続の鳥が上手に捉えられれば、体を持ち上げる力として利用できます。でも、目に見えない空気の流れを捉えるのは難しいでしょう。

調査で分かった鳥の編隊飛行の謎

鳥の編隊飛行は、下から見ていると同じ高度を飛んでいるように見えます。ところが、後続の鳥は、前の鳥よりも少しずつ高いところを飛んでいます。

おそらく、前を飛ぶ鳥の翼で生じる、翼端渦流を利用してエネルギーの節約をしているのでしょう。

しかし翼端渦流は、鳥の翼から生まれる乱気流のようなものです。羽ばたく状態によって、その都度変化しています。

地上から見ていると、優雅に編隊で飛んでいるようにしか見えません。でも後続を飛ぶ鳥は、前を飛ぶ鳥の翼の状態に応じて、距離や高度などを微妙に調節しているはずです。そして、最も揚力を受けやすい状態を保っているでしょう。

でも、渡り鳥に、そんな複雑で難しいことが可能なのでしょうか?

この謎を確認するため、ロンドン大学のSteven Portugal氏(獣医学博士)は、超小型飛行機に乗って調査しました。

博士は、超小型飛行機に高精度なGPSと加速度センサーを付けて編隊飛行する鳥を、近くから観察しています。

Portugal博士の調査結果

調査機材から得られたデータでは、鳥の編隊は常に、1.2メートルの間隔を保っていました。そして、翼が羽ばたく角度は、平均45度の遅れに保たれていました。

先頭の鳥が、羽ばたくタイミングは一定とはかぎりませんが、後続の鳥は、常にそれを察知して羽ばたいていたのです。

Portugal博士の調査結果では、次のことが分かりました。
鳥の編隊飛行は、複雑な数学を駆使して理論を作り上げた、空気力学的理論値と一致していたのです。

つまり、人が出来ないだろうと考えていたことを鳥は、やっていたのです。

まとめ

鳥の編隊飛行は、長距離を飛ぶための合理的な方法でした。

鳥が、どのようにして目にみえない空気の流れを読んで、合理的な編隊飛行を身に着けたのかは不明です。

渡り鳥にとっては、過酷な自然の中で生きていくために必死で獲得したエネルギー節約方法だったのでしょう。

尚、ペリカンに心拍モニターを付けた調査では、先頭を飛行する鳥の心拍数の方が、後続の鳥よりも高いことが分かっています。

先頭を飛ぶ鳥には、常に大きな負荷がかかることになります。これについては、次のような調査結果もあります。

オックスフォード大学の研究チームの調査では、編隊飛行中の鳥は頻繁に位置を変えていました。鳥の編隊飛行は、飛行時の負担を均等に分担していたのです。

このように、鳥の編隊飛行は、群の生き残りをかけて、協力しながら行っていた共同作業だったようです。

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