桜の開花宣言一位は温暖な地域が多いですが、東京が最初の年もあります。東京の桜が日本で最初に咲く理由を調べると花の開花の仕組みが理解できるようになります。植物の不思議な仕組みの一端に触れられます。きっと、日常とは違う世界を楽しめるでしょう。
東京の桜が全国で最初に咲く理由とは?
開花宣言では、温暖な地域を差し置いて、東京の桜(ソメイヨシノ)が最初に咲くことがあります。理由は、東京の冬の寒い日は、温暖な地域に比べて多いためと言われています。
桜が春に咲くメカニズムによると、極寒の冬を経験した後で温暖な気候にならなければなりません。九州や四国の温暖な地域では、極寒の冬が東京などに比べて少ないため、春の目覚めが遅れてしまうのでしょう。
この理屈を調べると、人の感覚とは全く異なる世界の、植物の開花の仕組みが分かるようになります。
桜の開花宣言一位が多い県とは?
桜の開花宣言は毎年テレビなどで話題になります。この桜は、全国的に広く分布しているソメイヨシノが対象です。
ソメイヨシノは、タネでは増えません。ソメイヨシノは、1本の木から挿し木や接ぎ木で増えたクローンだからです。クローンは、全て同じ遺伝子を持っていて環境が同じなら一緒に開花すると言われています。
そのため、開花宣言で一位が多いのは、気候の温暖な九州や四国でしょう。
しかし、東京や静岡、横浜などが、気候の温暖な地域に先駆けて一位をとることもあります。東京地方の気候が、南の地域よりも温暖とは思えません。何故、そうなるのでしょうか?
桜の開花のメカニズム
ソメイヨシノの花は春に咲きます。その後、ツボミは7月〜8月には作られます。ツボミは暑い夏の頃には既に枝についています。そして、春と同じような気温の秋を通過します。
夏にツボミがあるのに、春と同じような気温の秋には咲きません。秋の直ぐ後には極寒の冬が来るため、開花を避けるのです。
では、桜の木は、どのようにして季節を知るのでしょうか?
桜が季節を知る方法
じっとして動かないと思われている植物ですが、植物ホルモンを体内に作り出して、体を変化させています。そのため、季節の変化を事前に知ることが出来れば、準備することができます。
桜の木は、葉っぱで夜の長さをはかることで、季節の変化を感じとっていました。桜だけではなく、多くの植物は、夜の長さに変化があることで、冬に向かうことを理解します。
夜の長さの変化と植物の対応
夜の長さが最も長くなるのは冬至(12月の下旬)で、その後短くなります。夜の長さの変化を計測していれば、厳寒の季節を約2ヶ月前に知ることができます。
葉っぱは、夜の長さに応じて植物ホルモンのアブシシン酸をつくって芽に送り込みます。アブシシン酸は、芽を休眠状態にして開花を遅らせる物質です。
芽に到達するアブシシン酸が増えると、芽を包み込む越冬芽(えっとうが)が作られます。越冬芽は、言わば芽の防寒着のため、厳寒の冬をのりきるものです。
夜の長さをモニターして、変化のある冬至で越冬芽で包み込むシステムにすれば、春と同じ気温の秋に開花することはないのです。
でも、ちょっと待って下さい。
何故、秋に咲いてしまう狂い咲きは起きるのでしょうか?
狂い咲きのメカニズム
たまに春に咲くはずの桜が秋に咲くと、ニュースになります。その時に言われる原因は、寒い気温が続いて、その後暖かくなったために桜が勘違いしたというものが大半です。
この説は正しい場合もありますが、次のような場合もあります。
葉っぱが消失してしまった時
桜が春に咲くのは、葉っぱで夜の長さをモニターしてアブシシン酸という物質を芽に送ることで、越冬芽という防寒着を着ているためでした。もしも台風の強風やケムシなどによって葉っぱが無くなってしまったら、越冬芽は作られません。
越冬芽で覆われていない芽は、暖かい気温で開花してしまいます。そのため、秋に狂い咲きをすることもあるのです。
まとめ
桜の開花宣言は、毎年恒例になっていますが、温暖な九州や四国地方よりも先に東京や静岡、横浜などが全国一位になる年があって、不思議でした。
桜の葉っぱは、夜の長さの変化を計ることで季節を確認していました。季節を、2ヶ月前に判断できるため、寒い冬をのりきる対応をして、春になると花を咲かせていたのです。
- 冬の寒さを感じると、芽を休眠させていたアブシシン酸は、分解して消失してしまいます。
- 温暖な気候になると、ツボミの中にジベレリンという物質が作られ、ツボミの成長を促して、花を咲かせようと作用します。
桜は寒い冬に耐えられるように季節を知って、休眠状態の芽に防寒着を着用させ、真冬の寒さを経験して温暖な気候になると、休眠から目覚めさせて開花を促す仕組みを持っていました。
この仕組みで、桜は春に花を咲かせることができるのです。
また、頻度は少ないですが、東京の桜の開花宣言が全国で一位になるのは、寒い冬が温暖な地域に比べて多いためと言われています。
きっと、温暖な地域では、寒い冬の日が東京などに比べて少ないため、春の目覚めが遅れてしまうのでしょう。