食中植物が虫を捕まえなければならない理由

食中植物 花・野草
食中植物

虫を捕まえて養分にする食中植物も光合成をしています。そのため、生きることに必要なエネルギーは確保できているはずですが、違うのでしょうか? この記事では、食虫植物が、虫を養分にしなければならない理由を、食中植物の気持ちになって推測しています。

食中植物の種類と虫の捕獲方法

虫を捕まえて食べてしまう食中植物には、何か神秘的で興味をそそられます。次に代表的な食中植物と、虫の捕獲方法を紹介します。

《ハエトリソウ》
ハエトリソウは、直射日光が降り注ぐ湿地帯で生育する食中植物です。二枚貝のような葉を閉じて虫を捕獲します。

サメの歯のようにも見える葉っぱで獲物を捕らえる時の動きは、観る人を魅了します。

葉の感覚毛に触れると、約0.5秒のスピードでサメのような口の葉っぱを閉じるため何度も試したくなります。ところが、ハエトリソウは葉っぱを動かす為に、大きなエネルギーを消費しています。

そのため、餌を与えないで、葉っぱに刺激だけを与えて動かすと、黒く変色して枯れてしまいます。

《ウツボカズラ》
ウツボカズラは、湿地性の植物で、ツボのような形の捕虫器をぶら下げている、ツル植物です。

葉っぱを変形させた捕虫器の中には消化液が入っていて、虫が落ちると養分を吸い取ってしまいます。ジャングルにあるウツボカズラのツボの底には、昆虫の外骨格などが沈んでいます。

《モウセンゴケ》
モウセンゴケは湿原などで生育する多年草です。モウセンゴケは、ウツボカズラとは全く違う姿ですが、ウツボカズラ目に分類されている食虫植物です。

モウセンゴケの葉っぱには、腺毛が生えていて先端がネバネバしています。葉っぱに虫がとまると、虫は腺毛のネバネバに捕らえられて動けなくなります。

虫を捕らえると、葉っぱや腺毛は、ゆっくりと虫を包み込むように曲がって消化酵素を出して分解・吸収してしまいます。

食虫植物が虫を捕獲しなければならない事情

野生環境では人が育てる野菜などと違って、飼料などはありません。

そのため、植物の生育環境によっては、花を咲かせるための栄養も足りないことがあります。そのような場合は、必要な栄養が確保できるまで数年間も花を咲かせません。

どこにでも生えてくる雑草の草取りをしていると、植物の生命力には驚かされます。但し、自然環境で子孫を絶やさないようにして生き残るのは大変な努力をしているのでしょう。

また、植物同士の生存競争もあるため、密集している環境は好ましくありません。もしも、他の植物が好まない環境で生育できるなら、邪魔されないで自由に繁栄できるでしょう。

そのため、食中植物は他の植物が好まない、養分の少ない土壌に生育することで、自分たちの世界を確保しています。

食虫植物が生育する環境は、土壌や光合成等から養分を充分に確保できない場所にあります。その為、不足した栄養分は、虫などから補給する方法を選んだのでしょう。

上で紹介した代表的な食中植物は、湿地を好みます。

では、湿地帯には養分が少ないのでしょうか?

湿地帯の栄養分は少ないの?

代表的な食中植物は、湿地帯を好んで生育環境にしています。食中植物は養分の少ない所に生育するため、虫から養分を補給しています。

では、湿地帯は養分が少ないのでしょうか?

湿地帯の栄養分は一般的には豊富と言われていますが、冷涼な場所が多くて気温が低いことから死骸などの有機物の分解速度は遅くなります。

特に水没すると微生物の活性は低下してしまいます。このような環境では、有機物は分解されないで堆積して泥炭(でいたん)になってしまいます。

泥炭になると、有機物に入っている栄養塩類は閉じ込められるため、植物が栄養素として吸収することが出来なくなります。

このような事情で、湿地帯の平均的な栄養分は豊富にあっても、湿地帯で生育する植物は、養分を吸収できません。

そのため、湿地帯で生育する植物にとっては、栄養分が少ない生育場所です。

食中植物は虫を食べないと生きていけないの?

食中植物は、葉で光合成をしています。そのため、虫を食べなくても生存に必要な糖をとって生きていくことは可能でしょう。

食中植物が虫を捕るのは、生存に必要なエネルギーの確保ではなく、成長を促す肥料(栄養塩)を獲得するためと言われています。

まとめ

食中植物が虫を捕食する理由は、次のように考えられています。

食中植物は、他の植物との過当競争を避けるため栄養分を取り込みにくい湿地帯で繁殖することにしました。

ところが、湿地帯では、成長を促す肥料となる有機物を摂取出来ません。そのため、食虫植物となって、虫を捕獲することにしたのでしょう。

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