アカシュウカクアリには、人からみると理解し難い習性があります。成人になったオスには、食事をするための口がありません。子孫を残すことに貢献すれば、口は役にたたないからでしょう。何とも、セツナく感じられますが、生き方はそれぞれなのでしょう。
アカシュウカクアリのオスには口が無いの？
多くのアリのオスは、結婚飛行をして子孫作りに貢献した後、1〜2日程で生涯を終わらせます。
アカシュウカクアリのオスは、生殖のためだけに生まれて来たのでしょう。成人になったオスの羽アリには、食事をする口がありません。
オスのことを考えるとせつなくなりますが、アカシュウカクアリの女王候補にも試練は待っています。
アカシュウカクアリの女王候補
アカシュウカクアリのメスの羽アリは、将来女王になるかもしれないアリです。オスとメスの羽アリは、夏の日の午後にいっせいに飛び立ち、別の地上に舞い降ります。
オスは逃げまどうメスを捕まえて目的を果たした後は、強い日射しを避けるなどしてエネルギーの消費を防ぎます。でも、どんなに節約しても、餌を食べられないために直ぐに死んでしまいます。
女王候補のメスは、卵を産むための大量の精子を体内に蓄えると、オスから逃げるように飛んで行ってしまいます。その後、巣を作るために地上に舞い降りて翅（はね）を落とします。
ところが、多くのメスアリは、ウロウロしているうちに鳥などの餌食になってしまいます。
アカシュウカクアリは、オスアリだけではなく、女王候補のアリにも、厳しい試練がありました。
生き残ったメスアリは、40㎝程の穴を掘ると入口を塞（ふさ）いで子づくりに励みます。
最初に産んだ卵が成虫になるまでは、体の脂肪分などを与えながら、自分だけで育て上げなければなりません。
最初の卵が成虫のアリになると、外から餌を調達してくるようになります。そして、女王アリの世話もするようになりますが、殆どの巣は2年も経ずに消滅してしまいます。
女王アリは、巣からは一歩も出ないで子づくりだけに専念するします。そして、多くの女王アリは、子孫の世話をするだけで短い生涯を閉じてしまいます。
アカシュウカクアリとはどんなアリなの？
アカシュウカクアリは、米国南西部のアリゾナ州にある砂漠地帯付近に生息しています。体長は、10mm弱の赤茶色のアリです。30℃〜35℃程の高温で活発に行動しますが、日射しの強い時は、物陰にひそんでいます。
食べ物は、穀物のタネなどです。
最も奇妙なアカシュウカクアリの性質
アカシュウカクアリの偵察アリが穀物のタネを見つけると、巣に戻ってきて仲間のアリに場所を教えます。すると、巣にいた餌取アリが出動してタネを巣に運びます。
餌取アリは、その道中に穀物のタネがあっても見向きもしないで教えられた場所のタネを探して持ち帰ります。
このように、アカシュウカクアリは、決められた通りに決められた行動をします。融通の利かないアリですが、ルールをしっかり守るアリなのでしょう。
アカシュウカクアリが予定変更をしないのは、砂漠の厳しい環境が、そうさせているのかもしれません。
まとめ
アカシュウカクアリは、人からみると不可解なアリです。
合理性を追求するためなのか？ 子づくりするためにだけ成長したオスの羽アリには、餌を食べる口がありません。成人して子孫作りに貢献すれば、使命が達成できるからでしょうか？
また、餌取アリは、偵察アリに指定された場所の餌だけを巣に持ち帰り、途中にある餌には見向きもしないで素通りします。
アカシュウカクアリに限らず、昆虫の行動は、人には理解できないものが多数あります。
但し、本当は経験に基づいた理由はあるのでしょう。
人には、理解出来ない昆虫の奇妙な行動が人生の楽しみを増やしてくれます。
