樹木の多くの枝は、上方向に伸びます。理由は、枝の構造が、上方向に伸ばすようになっているからです。では、シダレザクラは、なぜ垂れ下がるのでしょうか? この記事では、シダレザクラの枝の断面構造から説明しています。
ゴージャスに咲き誇るしだれ桜
近くで見るソメイヨシノの花に近寄ってみると、清楚(せいそ)ですっきりしています。但し、満開のソメイヨシノを見ると、空間の空気や雰囲気を変えてしまう程の晴れやかさを持っています。
ソメイヨシノは、近くで見ても、離れて観ても美しくて素晴らしい。
東京で作られたソメイヨシノが、瞬く間に全国に広がったのは、誰もが美しさに魅了されたからでしょう。
桜の木は、100種類以上あると言われていて、ソメイヨシノ以外の桜の花にも素晴らしい特徴があります。特にシダレザクラは、枝が上に向かって伸びるソメイヨシノとは違って、頭の上から垂れ下がるように咲き誇ります。
シダレザクラは、まるで花びらの滝のようにゴージャスで華やかです。
シダレザクラは枝が曲がっていて、垂れ下がるように咲きます。では、シダレザクラの枝の構造はどうなっているのでしょうか?
シダレザクラの枝の構造
通常の樹木の枝の断面は、年輪が同心円状に並んでいます。ところが、一般的な被子植物(桜の木など)の年輪は、枝の上側で広く、下側で狭くなっています。
枝の上側で広くなる年輪構造は、枝の上側で発達して枝を上に引き上げます。そのため、引っ張りあて材と呼ばれます。
シダレザクラも、被子植物ですが年輪構造は、ほぼ同心円状です。通常の桜の木のような引っ張りあて材ではありません。そのため、枝が垂れ下がってしまうのでしょう。
ちなみに、樹木の生長に影響する植物ホルモン(ジベレリン)をシダレザクラの芽に与えると、引っ張りあて材が作られます。
そのため、枝は垂れ下がらなくなります。
被子植物と裸子植物の枝の支え方
花を咲かせてタネで子孫を増やす植物は、タネに変化する胚珠(はいしゅ)をどのようにしているかで分けられます。
被子植物(ひししょくぶつ)は、胚珠が子房で覆われています。
これに対して、裸子植物(らししょくぶつ)、胚珠をむき出しです。
被子植物は、引っ張りあて材で枝を上に引き上げています。そして、裸子植物は、被子植物とは逆に、枝の下側の年輪の幅を広くして、枝の下から支える働きをしています。
枝の下側の年輪幅が広い部分は、圧縮あて材とよばれています。
被子植物と裸子植物の仲間
地上の植物の90%を占めると言われている被子植物は、サクラ、タンポポ、アブラナ、ツユクサなどです。
地上の植物の10%程度と少ない裸子植物は、マツ、スギ、ソテツ、イチョウなどの仲間になります。
まとめ
サクラの木が分類される、被子植物の枝の年輪は、枝の上側が広く、下側が狭くなっています。
枝の上側で広い年輪構造は、広い部分で大きく発達して、枝を引き上げようとするため、引っ張りあて材と呼ばれます。
裸子植物は被子植物とは逆に、枝の下側の年輪の幅を広くして、枝の下から支えるため、圧縮あて材と呼ばれています。
引っ張りあて材や、圧縮あて材の効果で、大部分の樹木の枝は、上方向に伸びます。ところがシダレザクラの仲間の枝の年輪は、同心円状です。引っ張りあて材や、圧縮あて材がありません。
シダレザクラは、引っ張りあて材や、圧縮あて材がないため、枝が重力に引っ張られて垂れ下がっているのでしょう。