昆虫の優れた環境適応能力の秘密

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厳しい環境

昆虫は深海を除いた地球上のあらゆる場所で生息しています。環境への適応能力が優れているからでしょう。記事では、極寒地や乾燥地域に棲んでいる昆虫が、どんな方法で生きているのかを紹介しています。優れた環境適応能力の秘密の一旦を知ることができます。

昆虫の優れた環境適応能力の秘密

大型の恐竜や爬虫類、哺乳類が環境の変化に適応できないで絶滅していく中でも、昆虫は、4億年もの間、命をつないできました。しかも昆虫は、水中を除いた様々な環境下で生息しています。

現在、昆虫は地球の生物種の中で、85%を占めています。さまざまな地域に進出する能力や、変化する地球環境の中で、昆虫の適応能力は優れていると言わざるをえません。

人体では耐えられないような極寒地域や乾燥地域に棲息している昆虫の能力を、次に紹介します。

休眠

多くの昆虫は、休眠という方法で、厳しい環境をのりきっていました。

休眠すると代謝活動は低下して行動は鈍くなりますが、極端な寒さなどに対して抵抗できるようになります。

休眠は、進化の過程で勝ち取った生物の特殊な能力のため、全ての生物が対応できる訳ではありません。ただし、休眠をすると、活動に適した季節が来るまでエネルギーを温存して、生きのびることが出来ます。

昆虫の耐寒性の進化

昆虫は、熱帯地方で誕生したと言われています。そのため、寒い高緯度地帯に進出するには、休眠だけでは足りません。耐寒性も進化させる必要がありました。

昆虫の耐寒性には、2つのタイプがあります。

それは、地域の気候に応じて、一部凍結しても耐えられる程度の耐凍型と、凍結には耐えられない非凍結型です。

非凍結型の昆虫は、体液が凍ってしまうほどの寒冷地では生息できないため、ここでは割愛します。

耐凍型の昆虫

耐凍型の昆虫は、体液の耐凍性を高めるため、グリセロールやトレハロース等の不凍化物質を生成して、体液として蓄積しています。

《不凍化物質とは?》
不凍化物質とは、生物の凍結防止や氷の再結晶化を防止して、生物が生き残れるように働くタンパク質のことです。南極海に生息する生物は、不凍タンパク質を持っています。その為、体液が海水の凍結温度以下になっても凍りません。

グリセロールやトレハロースは、不凍タンパク質の仲間で、不凍糖タンパク質とも呼ばれています。

寒くなると耐凍型の昆虫の細胞内にある水は、体内に蓄積した凍結保護物質(グリセロールやトレハロース)と入れ替わります。

その為、昆虫の体内は、凍結保護物質で充満されます。

こんなことは普通では考えられませんが、寒冷地域に棲む昆虫の体内では実際に起きています。

寒冷地域に棲(す)む休眠昆虫は、秋になって、低温にさらされると不凍化物質を体に溜めはじめます。

ところが、休眠しない昆虫の体内では、気温が低くなっても、不凍化物質を蓄積しません。

昆虫の耐乾燥性の進化

体の小さな昆虫は、水分蒸発が激しいです。これは、昆虫の体の大きさに比べて、体の表面積が大きいためです。

昆虫は、体からの水分蒸発を少なくするため、体表をワックスで覆うなどの方法で水分蒸発を防いでいます。

ところが、極端な乾燥地帯に棲息(せいそく)する昆虫は、特別の環境で生き延びるために、次のような特殊能力で対応しています。

ネムリユスリカが乾燥に耐える方法

ネムリユスリカは、アフリカのナイジェリアの半乾燥地帯で生息している昆虫です。

ネムリユスリカは、、岩のくぼみなどの水たまりに産卵します。でも、この地域の降雨は不定期のため、雨が降らない期間が長いと、水たまりは完全に干上がります。

水たまりが干上がってしまえば、卵から孵化(ふか)した幼虫は、直ぐに死んでしまいます。

この乾燥対策として、ネムリユスリカの幼虫は、無代謝状態になって半永久的な休眠に入ります。

休眠状態のユスリカの幼虫は、水分が抜けてカラカラに乾燥しますが、雨が降ると体が膨らんで発育を始めます。

ちょっと信じられませんが乾燥状態が10年も続いても、水を与えると復活できると言われています。

ネムリユスリカの幼虫は、体が乾燥すると、トレハロースという糖の一種を爆発的に合成して、休眠状態に入ります。トレハロースの特性が、乾燥状態で休眠している体を維持するのでしょう。

尚、地球上の殆どの環境で生息する、クマムシ類も、ユスリカの幼虫が持っているのと同じ方法で、乾燥状態で長期間休眠をします。

まとめ

大型の恐竜や爬虫類が地球環境の変化に適応できないで絶滅していっても、昆虫は、海中意外の様々な環境で生きてきました。

現在、地球の生物種の中で昆虫は、85%も占めています。

耐凍型の昆虫は、体液を凍結しにくくするため、水分をグリセロールやトレハロース等の不凍化物質と入れ替えていました。その上で、代謝活動を低下させるための休眠をして活動に適した時期を待つという戦略で対応していました。

体が小さくて、乾燥に弱い昆虫ですが、ネムリユスリカの幼虫は、水分が抜けてから長期間経過しても、水分があると復活します。乾燥しても体が壊れないように、体液を別の物質に入れ替えてしまうからです。

人間の常識では考えられないことですが、まだまだ、生き物は不思議にあふれています。

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