DNA判定技術の進歩で発見された事例

DNA判定技術の進歩には目を見張ります。昆虫の研究にもDNA分析技術が使われていて、新種の判定や、進化の分類などで活用されています。記事では、絶滅したとされていたナナフシが別の島で生存していることをDNA分析で確認した事例を紹介しています。

背景

2001年にオーストラリア東岸沖の島で発見された、ナナフシは、最近のDNA技術で、過去に絶滅した品種と分かりました。このナナフシは、1918年に絶滅した品種と報道されています。調査したのは、沖縄科学技術大学院大学などです。

この、ナナフシは、絶滅した品種とは形が違うため進歩したDNA判定技術がなくては特定出来ませんでした。

1918年に絶滅した、ナナフシが棲んでいた島

1918年に絶滅したナナフシは、ロードハウナナフシと呼ばれる体長15㎝程の昆虫です。ロードハウナナフシは、オーストラリアの東岸沖600km程の島に生息していました。

この島は、ロード・ハウ島と呼ばれる火山でできた島です。15平方キロメートルの面積で、350名の住民もいました。

島で生息していた、ロードハウナナフシは、難破船等に潜んでいたクマネズミが島に上陸したため、絶滅したと考えられていました。(1918年に絶滅)

ところが、ロード・ハウ島から20km程離れた、島で、ロードハウナナフシのような昆虫が発見されました(2001年)。ボールズ・ピラミッドと呼ばれる島です、

ボールズ・ピラミッドは、海中から突き出しているような奇妙なピラミッドのような形をしていて、標高の最大地点は562mです。但し、その島の幅は最大でも1kmしかありません。楯状火山の一部だったようです。

2001年に、ロードハウナナフシと思われる昆虫が発見されたため、調査隊が編成されています。そして、2003年には断崖絶壁上の調査が行われています。

ボールズ・ピラミッド島で捕獲された、ナナフシ

 調査隊は何とか断崖をよじ登って、ロードハウナナフシと思われる昆虫(雌雄一対)の捕獲に成功しました。雄と雌を捕獲した理由は、繁殖(はんしょく)を目論んだためです。

捕獲した、ナナフシは、ロード・ハウ島の博物館に収蔵されている、ロードハウナナフシの標本とは体形が違いました。このナナフシの体形は、がっしりしていて雄の脚のトゲも大きく、絶滅した品種なのか、別の品種なのかの区別ができませんでした。

ボールズ・ピラミッド島で捕獲された、ナナフシのDNA鑑定

ボールズ・ピラミッド島で捕獲した、ナナフシが絶滅した、ロードハウナナフシなのかの判定は、このままでは出来ません。

採取したナナフシから生まれた子供のDNAと、ロード・ハウ島の博物館にある標本を比較する必要がありました。(何故、子供のDNAとの比較が必要なのかは、別途調べる予定です)

標本で保管してあるDNAは時間の経過とともに劣化してしまいます。つまり、2003年当時の解析技術では不可能でした。

最近になって、古い標本のDNA解析が可能になりました。そして、2017年10月5日付、Current Biology誌のオンライン版に、DNA判定結果が報告されました。

DNA解析結果

 DNA調査の結果は、両社の相違は1%未満と判定されました。この結果から、ボールズ・ピラミッド島で採取された昆虫は、絶滅した、ロードハウナナフシと確認されました。

この結果を受けたオーストラリア政府は、2018年に、ロード・ハウ島にいるネズミ類を一掃することをきめました。そして、ロードハウナナフシの子孫を復活させる計画をたてています。

本事例で判ったこと

     

  • 博物館の保管サンプルは、DNA判定に役立つ。
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  • DNA解析技術の進歩によって不明点の解明ができるようになった。
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  • 難破舟等によって動物が他の島に渡ってしまう怖さを知った。

まとめ

博物館などで、展示されている剥製などの動物も、将来新しい技術の発見で、蘇るかもしれませんね。

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