昆虫が群がる木が見つけられないのは、樹液が出ている木が少ないからです。クヌギは、樹液が出る木として有名ですが、樹液を出そうとしても簡単ではありません。記事では、樹液の中身や、樹液を出しているクヌギの木がどんな状態なのかを紹介しています。
▼目次
昆虫が群がる木を見つけるのは大変
夏の日の早朝、樹液が出ている木に巡り合えば、カブトムシや、クワガタムシ、カナブンなど昆虫たちが群がっている光景に遭遇できますが、雑木林をくまなく探しても、簡単には樹液がでている木はみつけられません。
クヌギは、樹液が出る木として知られていますが、樹液を出そうとしても簡単ではありません。いったいどうすると樹液が出るのでしょうか。
昆虫たちが群がる樹液って何?
樹液は、葉で光合成をした結果生まれた栄養分のことです。葉で作った栄養分(糖)を木の幹の内部にある師管(しかん)という管を通して下ろしてきたものが、何かの要因で師管から漏れてしまったものです。
樹液は、動物に例えると傷口から漏れ出した血液のようなものです。
・樹液が出続けるのは何故?
動物が傷を負えば、傷口を修復するための機構が働いて、血液を止めますが、樹液の場合は何故か止まらないで昆虫たちを楽しませてくれます。植物も動物と同じように師管の傷口をふさぐことをするはずですが、長い間、樹液は漏れ続けています。
クヌギの場合は、樹液が漏れ続ける理由が判りました。
・・クヌギの場合
クヌギの木では、ボクトウガという「ガ」や、シロスジカミキリの幼虫が樹液を出させていました。(多くの木では、まだ分かっていません。)
- シロスジカミキリの幼虫は、木の中で材部を食べて成長しています。成長過程で師管を傷つけ、糞や木くずを排出するために樹皮に穴を開けています。
- ボクトウガの幼虫は、シロスジカミキリの幼虫と同様に、木の内部を食い荒らします。それだけでなく、樹液の匂いにさそわれてやってきた昆虫も食べてしまうギャングのような幼虫です。
このように、樹液が漏れ出すクヌギの木では、シロスジカミキリやボクトウガの幼虫が常駐していて、傷口が修復されないで常に樹液が漏れていたのです。
樹液が出ている木にとっては、傷口を早く修復したいのに、それをさせてくれないカミキリムシやガの幼虫は、嫌な害虫でしょう。
逆に、カブトムシやクワガタ、カナブンなどの昆虫にとっては、彼らがいてくれるおかげで素晴らしい夏の日を過ごせるのです。
樹液が出やすい時間帯は?
樹液は1日中、出ていますが、出る量が増えるのは夜間です。日が沈んで光合成が終了すると、栄養分は師管で木の隅々に運ばれるので、夜になると樹液の量は増えます。
夜になると、力の強い、カブトムシやクワガタムシが樹液に群がるようになります。これは、昆虫の天敵である鳥を避けるためですが、樹液が沢山出ることにも関係しているようです。
樹液を出す木が少なくて良かった!
多くの昆虫にとっては、無くてはならない樹液ですが、樹液を出す木にとっては、体の傷口から漏れ出す貴重な栄養分を無理やり、提供させられていたことになります。
昆虫採集をする時には、もっと樹液を出す木があれば良いと考えていましたが、樹液を提供する側と搾取(さくしゅ)側のバランスで考えると、そんなわけにはいかないのでしょう。
ポイントのまとめ
昆虫が群がる木が簡単に見つけられないのは、樹液が出ている木が少なかったからです。樹液を出しているクヌギの木は、傷口を補修できないように昆虫から痛めつけられている木でした。
樹液を出しているクヌギの木の内部には、ボクトウガという「ガ」や、シロスジカミキリの幼虫が潜んでいて木の内部を傷つけていました。彼らが樹液が流れ出るようにしていたのです。
もしも樹液を出している木が、あっちにもこっちにもあったら、樹木は無くなってしまうかもしれません。将来の子供たちにも森を見せられるように、丁度良いバランスだったのでしょう。