鳥には手はありませんが、 とがっているクチバシがあります。鳥の仕草を観察すると、鳥の口が何故クチバシになったのか判るようになります。この記事では、クチバシの役目や構造から、鳥の口には、なぜクチバシが選ばれたのかを紹介しています。
鳥の口がクチバシになった理由
多くの鳥は、羽で空を飛ぶ能力を持っています。
自分の体を浮遊させて飛ぶためには、大きな力を出すために、特別優れた循環器系の能力を持つ必要があります。そして、少しでも体の負担を少なくするために、体の軽量化も必須です。
歯は食べるものをかみ砕かなければならないため、密度が高くなって重くなります。そのため、鳥は、歯を無くして飛翔するのに都合の良い軽量なクチバシにしたのでしょう。
鳥が歯を捨てて軽いクチバシにした1番の理由は、空を飛ぶためでしょう。但し、クチバシには、それ以外のさまざまな役目もあります。
クチバシの役目
鳥は、首を曲げると、くちばしは背中やお尻にもとどきます。鳥は、クチバシで羽繕いや、体に付着した寄生虫をついばむこともできます。
手のない鳥は、人が指先を使うようにクチバシを使っています。クチバシの役目には、次のようなものがあります。
- 羽繕い
- 食べる、割る、つぶす、突き刺す、はがす
- ひなにエサを与える
- 舌とともに、固さ・質感・温度・味などを感じる
- 持ち上げる、保持する
- クチバシを木の枝などに挟み込んでぶら下がる
- 巣作り
- 持ち上げる、投げる、落下させる
中でも頻繁に行うのは、腰部付近から分泌される尾脂腺(びしせん)の脂をクチバシでしぼり取って羽毛に塗りつける羽繕いです。これは、体の保温力と飛翔力(ひしょうりょく)が常に最大に発揮されるようにするための大切な行為です。
クチバシは、羽繕い、エサを食べる、ものを持ち上げるなどの行為をピンセットのようにして扱える大切なツールです。しかも、出来るだけ軽量にして飛翔しやすい形にしたのでしょう。
鳥の骨は、軽量化のため、スカスカの構造ですが、強度を保つための筋交い構造になっています。クチバシも同様です。
体のさまざまな場所に届くクチバシ
一見して、首がないように見える小鳥でも、首を回してお尻の周りの羽毛の毛繕いをすることもできます。
鳥は、飛翔力維持のため、常に羽繕いできるように、クチバシが体中にとどくように進化したのでしょう。
首の自由度は、首の骨(頸椎)で決まります。哺乳類の場合は、大抵7個と決まっています。人間・キリン・ゾウは全て7個の頸椎(けいつい)を持っています。
もちろん、キリンの頸椎の長さは他より長いですが数は、7個です。
一方で、鳥類は必要に応じて頸椎の数ができたようです。例えば、セキセイインコは12個、ニワトリは14個、そして、ガン・カモ類には14個〜25個の頸椎があります。
鳥類最大の頸椎を持つハクチョウ
鳥類は哺乳類の2〜3倍もの頸椎をもっているため、あらゆる方向に自由自在に首を曲げることが出来ます。
鳥類の中で最大の頸椎を持っているのは、ハクチョウです。25個の頸椎を持っています。白鳥が優雅に見えるのは長くて自由にまがる首を持っているからでしょう。
もちろん、ハクチョウでも後頭部にはクチバシは届きません。そのため、親しくなった相手には、後頭部周辺の羽繕いをしてもらいます。
これは、ハクチョウだけでなく他の鳥も同じです。クチバシが届かない後頭部周辺の羽繕いをしてもらう行為は、鳥類の大切なコミュニケーションなのでしょう。
まとめ
鳥の口がクチバシになった理由は、重い歯を持たない構造にしたからでしょう。
但し、それだけではなく、常に飛び立つことができるように羽毛のメンテナンスが出来る形状にしたかったからだと考えられます。くちばしなら、羽繕いしやすくて、軽量です。
クチバシは、鳥の骨の構造と同様に筋交い以外は空洞になっていて、軽量化されています。そして、クチバシの先端は、扱いやすいようにピンセットのような構造をしています。
人から見ると、手のない鳥は、不自由だろうと感じられます。ところが、鳥の頸椎(けいつい)の数は哺乳類よりも多くて、首を真後ろに曲げて、クチバシをフルに使えます。
鳥類は、自由に曲がる首と、先の尖った精密ピンセットのようなクチバシを駆使して不自由なく過ごせるのでしょう。