シロアリとアリは、姿も名前も似ているけれど、両者は全く違う生物です。シロアリは、害虫という印象が強いですが、調べると、印象は好印象に変わりました。この記事では、シロアリとアリの性質や食性等を比較しながら、シロアリについて紹介しています。
シロアリとアリは、全く違う生物
シロアリは、アリという名前がついていて、アリのような姿をしていますが、実はアリではありません。
シロアリとアリを比較してみましょう。
シロアリとアリの変態形式
アリは、卵から孵化(ふか)しても炊きたてのご飯粒のような形をしていて、自力では生活できません。アリは、孵化した後で、さなぎになる、完全変態の昆虫です。
ところがシロアリは、卵から孵化すると、既に手足や触覚、はねが備わっている、不完全変態昆虫です。
完全変態と不完全変態とは?
昆虫は、成体とは異なる形で生まれてきます。この時に幼虫から、さなぎを経て成体になるものを完全変態(かんぜんへんたい)と呼びます。不完全変態の昆虫は、さなぎにならないで成体になります。
完全変態の幼虫は、成体とは、かけ離れた形(大抵は、イモムシのような形)です。これに対して、不完全変態の幼虫は、はねや手足が備わっていて、脱皮を繰り返して成虫の姿に近づいていきます。
完全変態と不完全変態昆虫の出現時期
完全変態昆虫は、約4億8,000年前に地球上に出現しています。(チョウ、カブトムシ、ハチ、ハエ等)
不完全変態昆虫は、約3億5,000年前には、存在しました。(バッタ、ゴキブリ、カマキリ、ナナフシ等)
不完全変態のシロアリは、アリよりも1臆3,000年も古い時代から地球上に生息していたのかもしれません。
シロアリとアリの食性
多くのアリの食べ物は、肉食ですが、様々なものを食べるため、雑食と言ってもいいでしょう。
これに対して、シロアリは、木材などの死んだ植物を食べます。
死んだ木材には、生木よりもセルロース(炭水化物)が多く含まれています。シロアリは、セルロースを分解して食べることができるからです。
シロアリの腸内には、植物細胞の細胞壁や植物繊維の主成分になっているセルロースを分解する微生物が共生しているためです。
セルロースは、ブドウ糖の結合方法がデンプンと違うため、人や普通の動物には分解できません。シロアリは、腸内に共生する微生物のおかげで枯れ木を食べることができます。
草食動物の多くは、分解しにくいセルロース(細胞壁)を避けて、たんぱく質や脂質を栄養源にしています。
牛や馬もシロアリと同じように微生物と共生しているため、セルロースからも栄養を摂れます。
ところが、セルロースを主食とするシロアリの単位当たりのたんぱく質の量は牛肉以上に豊富と言われています。
そのため、シロアリは、他の動物の重要な栄養源になっています。
まとめ
一見すると、シロアリは、アリの一種と勘違いされそうですが、全く違う生物だということが判ったでしょう。
シロアリとアリの従来の印象
■アリは、害虫退治をすることや、勤勉という印象が強い、(益虫)です。
■シロアリは、家を食い荒らす(害虫)として、扱われています。
シロアリの現在の印象
■シロアリは、枯れ木などの地球資源を有効に活用する生物です。将来の食料難を克服する有力な候補かもしれません。
シロアリに対する、印象は180度、変わりました。