ヒガンバナが、日本中に広がった理由

ヒガンバナ 花・野草
ヒガンバナ

少し前の日本では、秋になると、あちこちでヒガンバナが群生していました。そんなヒガンバナは、種子を持っていないため、独力で分布を広げることはできません。この記事では、ヒガンバナが、どのようにして日本中に分布を広げたのかを紹介しています。

ヒガンバナは、どのように日本中に広がったの?

ヒガンバナは種子を持たないで球根です。毎年同じところから生えてきますが、どのようにして各地に広がったのでしょう。

昔の人は、引っ越しをするたびにヒガンバナの球根を持っていって、新居近くの田んぼのあぜ道や土手に植えたと言われています。つまり、ヒガンバナは、人手によって日本各地に伝搬したのです。

何故、ヒガンバナは植えられたの?

日本人は農耕民族のため、田んぼや畑に穴を掘る小動物の侵入を避けることに、気をくばっていました。
ヒガンバナは、地下の鱗茎に毒を持っています。そのため、ヒガンバナは小動物の侵入を避けると考えられています。

ヒガンバナは、田畑に穴を掘る小動物の侵入を避ける目的で、植えられたのでしょう。

同じような理由で、埋葬された御先祖様を小動物から守るため、墓地の周りにもヒガンバナは植えられました。

ヒガンバナとはどんな植物なの?

ヒガンバナは、秋風が吹き始める頃に、群れて赤い花を咲かせる植物です。子供の頃は、赤色が怖いのと、墓地に沢山咲いていたので、ヒガンバナに対して、意味もなく、良い印象を持っていませんでした。

大人になって、しっかり観察すると、ヒガンバナの自然に創られたものとは思えない程の妖艶な美しさには驚かされます。。

でも、種子を持っていないヒガンバナが、どのように日本各地に分布を広げたのでしょう。知らないことばかりです。

ヒガンバナの概要

日本のヒガンバナは、広く分布していて日本の花のようですが、原産は中国です。そして、中国の揚子江の中流域付近で、多く見られます。

中国から日本に伝搬した方法は、次の2つの説が有力です。

一つ目の説は、揚子江の洪水によって、土手に群生していたヒガンバナの球根が海に流され、九州に流れ着いたという説です。
二つ目の説は、人手によって九州に持ち込まれたというものです。

ヒガンバナの学名は(Lycoris radiate)です。このLycorisは、ギリシャ神話の海の女神の名前です。

2つの説のどちらが正しいのかは、不明ですが、九州に入ってきたヒガンバナは、その後、日本各地に分布を広げていきました。
但し、ヒガンバナは、種子がならない、不稔性植物(フネンセイショクブツ)です。その為、自然界で日本中に広がって行くことは考え難く、人手によって広がったと言われています。

和名:ヒガンバナ
 科名:ヒガンバナ科
 生態:多年草(花期:9月)、球根性植物
 背丈:30〜50㎝
 別名:マンジュシャゲ、ハミズハナミズ、シビトバナ、ソウシキバナ等々
 学名:Lycoris radiate
 花の特徴:6枚の花弁が輪形に並ぶ
 地下の鱗茎:有毒(食用や漢方にするには、解毒処理要)

花の咲き方

ヒガンバナは、葉が出てくる前に花茎を長く伸ばします。そして、先端から伸びた短い柄から真っ赤な六弁の花びらを大きく反り返らせて咲きます。花びらの長さは、4㎝、幅は5mm程度です。5〜7個の短い柄の、それぞれに花びらが付きます。

花が満開の時を過ぎると(晩秋の頃)、長さ30〜50㎝の細い葉を地表に水平に並べるように広げます。この葉は、翌春には枯れてしまうので、秋になるまで、ヒガンバナの形跡は見られません。

このように花を咲かせることや、葉を出すため、ヒガンバナには、ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)という別名もあるのでしょう。

ヒガンバナの毒

ヒガンバナは有毒ですが、球根はむくみを解消する薬用としても使われていました。球根には良質のでん粉を多量に含んでいることから、飢餓の時などは、解毒後に非常食として利用されています。

《どんな毒なの?》
球根には、リコリンというアルカロイドが含まれていて毒性は強いのですが、無毒のでん粉だけを取り出す工夫をしていたようです。但し、しっかりと解毒を施さないと中枢神経の麻痺や、死に至ることもあるので、専門家による対応が必要です。

まとめ

原産が中国の揚子江の中流域付近のヒガンバナは、種子をもっていません。ところが、九州に入って来くると、人手によって植えられて日本中に広がりました。

《日本中に広がった理由》
日本では、田んぼや畑に土に穴を掘る小動物の侵入を避けるため、鱗茎に毒を持っているヒガンバナが植えられました。同様に、墓地の周りにもヒガンバナは植えられました。

さらに、ヒガンバナは、次のような理由でも重宝されていました。

  1. 有毒なヒガンバナの球根は、むくみを解消する薬用としても使われていた。
  2. 球根には良質のでん粉を多量に含んでいるため、飢餓の時などは、解毒後に非常食として利用されていた。

以上のように、ヒガンバナは日本人には、とても有益な植物だったため、日本中に広がっていったのでしょう。

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